後見人の報酬
親が認知症と診断され、親の財産を扱えなくなり、非常に困っているという話が増えています。法定後見人の選任が必要になってくるのですが、どれくらいの費用がかかるのか。心配はそこになります。
一般的なお答えしかできないのですが、裁判所のホームページにある平成25年1月1日付の東京家庭裁判所立川支部の「成年後見人等の報酬額のめやす」という文書には、成年後見人の基本報酬として、月額2万円とありますが、管理財産額(預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額)が高額な場合には、財産管理事務が複雑、困難になる場合が多いので、管理財産額が1000万円を超え5000万円以下の場合には基本報酬額を月額3万円~4万円、管理財産額が5000万円を超える場合には基本報酬額を月額5万円~6万円と記載されています。
それだけでなく、成年後見人等の後見等事務において、身上監護等に特別困難な事情があった場合には、上記基本報酬額の50パーセントの範囲内で相当額の報酬を付加報酬として付加されます。また、成年後見人等が、例えば,報酬付与申立事情説明書に記載されているような特別の行為をした場合には、相当額の報酬を付加することがあると記載されています。
なんだか分かりづらいですよね。特別の行為には、成人被後見人の身上監護にあてる目的で不動産を売却して3000万円を取得した場合などで約40~70万円、と記載されているサイトも見受けられます。そんなに多い事例ではないようですが、後見人の仕事の内容によっては月額にして10万円を超える場合もあるようです。個々の報酬額は家庭裁判所が決めることなので、具体的な詳細は分からないのが実情ではないでしょうか。
報酬の年額が最低でも約25万円。高いと思うか、安いと思うかは人それぞれだと思いますが、認知症の症状が改善されない限り、亡くなるまで報酬を支払い続けると思うと、気が重くなるのも分かります。当然、家族が後見人になるならどうなの?と考えますよね。家族の場合なら無報酬だってありえますから、当然の疑問です。
成年後見人は家庭裁判所が選ぶことになりますが、民法847条に成年後見人になれない人が挙げられているのですが、未成年者、破産者、行方不明者でなければ誰でも成年後見人になれます。
それでも全体の7割は、弁護士、司法書士、社会福祉士といった専門職の方が成年後見人に選ばれているようです。財産管理や身上監護を担うわけですから当然と言えば当然ですね。成年後見人を選ぶ決定権は裁判所にあります。成年後見人の選任には、家庭裁判所へ申立書類を作成して申述する必要があります。この申立書に、家族を希望する旨を記載しておくわけですが、最終的には裁判所の判断になります。
財産が少ない、財産管理が簡単、候補者の年齢が被後見人より若い、候補者の今までの財産管理が適切、他の家族からの異議や争いがない、などなど家族がなりやすい条件などが言われています。また、成年後見人のなり手が少ないという情報もありますから、家族が選ばれる可能性がゼロとは言えませんが、裁判所の判断次第であることは間違いないですね。
やはり、認知症の心配が出てきたら、任意後見契約公正証書を作成しておいたほうが良いと私は思います。認知症になったら家庭裁判所へ成年後見監督人の選任を申述しなければなりませんが、基本報酬の月額は管理財産額が5000万円以下の場合で月額1万円~2万円となり、成年後見人の約半額になります。亡くなるまでかかる費用ですから、差額は大きいですよね。
任意後見契約公正証書は財産管理の委任契約公正証書とセットで作成するのが一般的です。行政書士が間に入ることで手間も格段に少なくなります。分かりにくいこと、もっと知りたいこと、気軽に相談してください。「そうだ!行政書士に相談しよう」が行政書士会のスローガンです。気軽に頼れる街のかかりつけ法律家、行政書士をぜひご利用ください。