散骨の希望

「お墓なんて要らない」…そんな方も増えています。そうした希望を遺族に叶えてもらうために、遺言書にしておきたいと考える方もいらっしゃいます。そもそも遺言書でそうした希望が叶うのかというのが、今回のポイントです。

 遺言書は民法に記載されている法的な書類になりますが、法的な拘束力を持つ内容は限られています。たとえば、
「相続分の指定や分割方法の指定」「遺贈」「廃除」「遺言執行者の指定」「祭祀継承者の指定」「子の認知」などです。残念ながら供養方法については法的拘束力がありません。

 だとしたら、供養方法などの希望について遺言書には記載できないかというと、付言(ふげん)という形式で記載が可能です。付言はあくまでも遺言者の希望を記載したもので、その希望を叶えなければならない義務は発生しません。それでも遺言者の意思を表現したものですから、相続人にとっては大切にするべきものだと言えます。

 希望を叶えるにしても、問題も出てきます。散骨するにしても場所をどうするかです。散骨が許される場所は、基本的に私有地、公海上、管理されている墓所の3つになります。他人の私有地や漁業権の付与された海や川にはできません。散骨を禁止している自治体もあります。散骨時に供物をまく方も多いですが、散骨場所によってはトラブルや自然破壊になる可能性もあります。かなり具体的な指示を残しておかないと、散骨する側に手間や苦労をかけてしまうことになりかねません。

 散骨する時は遺骨を必ず粉末化しないと、条例違反などに問われる恐れがあります。専門の業者に依頼する費用の問題も出てきます。経済的な負担が大きい場合は、遺族が散骨をやめる場合をあります。こうした費用も考えておかなければなりません。また遺族によっては、散骨に抵抗感を持つ方もいますし、代々の墓があるのに一人だけ散骨は出来ないと慣例を重視されることもあります。

 散骨だけではなく、「知人や友人すべてに連絡して葬儀に呼んで欲しい」とか「家族だけで親戚は呼ばずに密葬にして欲しい」といった葬儀の方法なども、同じように付言に記載しても難しい問題があると思います。いつものことですが、基本は家族とのコミュニケーションです。日頃から相続や葬儀に関することを話し合っておくことが、とても大切です。

 そうは言っても、なかなか話すのが難しい。そういう方こそ、きっかけとして行政書士に話してみてください。今年の行政書士会のスローガンは「そうだ!行政書士に相談しよう」です。気軽に頼れる街のかかりつけ法律家、行政書士をぜひご利用ください。