家族信託終了後の税金

 書店で家族信託の本を探すと、家族信託のメリットや契約のパターンを紹介した本がけっこう並んでいます。2~3年前に比べたら、認知症対策、相続対策として話題にもなっていますから、当然といえば当然ですね。

 ふと本をめくっていると、信託契約が終了してからのことがあまり書かれていないように思いました。

 家族信託契約で多い不動産が信託財産になっている場合、当然、信託契約の定めに従って、信託不動産を帰属権利者(残った信託財産を受取る人を「帰属権利者」と呼びます。)に所有権として引き渡すことになります。

 信託不動産は受託者名義で登記され、信託登記もされていますから、信託終了後は、信託不動産を受託者へ名義変更登記を行って、信託抹消登記を行う。そこまでは、なんとなくイメージはできます。じゃあ、税金はどうなるの?そういえば、あまり税金のことを書いてある本って、少ないですよね。

 家族信託は利用しやすくなってきたばかりなので、行政書士、司法書士、税理士と関与する士業の方が増える一方です。それでも税理士の方は、まだまだ少ないようなのです。行政書士も司法書士も、税金に関しては税理士の領域なので、説明しずらいのかもしれません。

 個別の具体的税金の話は税理士しかできませんので、信託不動産に関してポイントとなる部分だけをまとめておきたいと思います。

 信託継続時は、受益者が信託財産から一定の利益を受けていた場合は、確定申告をして、受益者が所得税を払うことになっています。信託終了時には、受益者ではなく、信託財産を受け取った帰属権利者が課税対象者となります。終了時の税金は現時点では、以下の3つとされています。

①所有権移転登記分の登録免許税:固定資産評価額×2%
②信託登記を抹消する分の登録免許税:不動産の個数×1000円
③不動産取得税:固定資産評価額×3~4%

 ただし、委託者=受益者という自益信託で、帰属権利者も同一人物の場合は、①所有権移転登記分の登録免許税と③不動産取得税は非課税になりますが、信託契約終了の条件が委託者の死亡が多いと思いますので、レアなケースかもしれません。この場合、相続人が残余財産を受け取ると通常の相続と同じになります。

 第二受益者というケースもあります。「最初の受益者が死亡したら、指定しておいた人が次の受益者になる」という契約です。この場合は、当然ですが①②③が原則通りに課税されます。

 ほかにも、信託契約終了時にかかる税金については、委託者と受益者、帰属権利者との関係次第で変わってくるようです。個別具体的なお話しであれば、士業は互いに連携して仕事をしていますので、提携している税理士をご紹介することが可能です。もちろん、登記のことなら司法書士をご紹介できます。

 誰だって、初めて会う人に頼み事をするのは心配です。そこでおすすめしたいのは、日頃から疑問に思うことなどを質問してみることです。セミナーや相談会に積極的に参加して、行政書士が気軽に接することができる街の法律家だということを感じていただき、「この人の紹介なら安心」と納得していただくのが一番だと思います。親しくなった人の紹介ほど、安心できるものではないと思います。ぜひ、気軽に行政書士に声をかけてください。