相続不動産の評価額

 相続のご相談で多いのが、相続財産である所有不動産が金額的にどのくらいの評価なのか、ということです。行政書士になるための試験には不動産関係がほとんど含まれていないので、アドバイスを苦手とする行政書士の方も多いようです。そこで行政書士になった後に、宅建やファイナンシャルプランナーの資格をプラスする方も多いです。私も同じ理由でファイナンシャルプランナーの資格を取得しました。

 相続税の問題もありますが、ご相談では、どちらかと言えば遺産分割を考えるために金額を知りたいというニーズが多いように思われます。その相続不動産の評価ですが、教科書的には以下のように計算していきます。

土地
(1)路線価方式: 路線価×補正率・加算率×地積
(2)倍率方式 : 固定資産税評価額×倍率
(3)借地   : (1)または(2)の評価額×借地権割合
(4)貸地   : (1)または(2)の評価額×(1-借地権割合)
(5)貸家建付地: (1)または(2)の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)

建物
(1)自用家屋 : 固定資産税評価額×1.0
(2)貸家   : 自用家屋の価額×(1-借家権割合)

 土地の場合は、路線価が定められている土地は路線価方式で計算し、路線価が定められていない土地は倍率方式で計算することになっていますが、相続が発生していない段階で相続不動産の金額を把握する場合には、固定資産税評価額を使って判断していくことが多いように思います。

 ご相談でのアドバイスとしては、毎年4月を過ぎる頃に所有者へ届く「固定資産税納税通知書・課税明細書」、あるいは市町村の担当窓口で「固定資産評価証明書」を取得することで、評価額を知ることができることをお伝えします。固定資産評価証明書を取得できるのは、原則として、所有者と同居する家族です。その他の相続人や民事訴訟の申立人などの場合には、別にその関係を示す書類を持参するか、所有者本人からの委任状を持参すれば取得できます。

 土地と建物の評価額は減額できるケースもあります。さまざまな条件を加えた相続税の具体的な算出は税理士業務となりますので行政書士は扱えません。

 もっとも相続財産が相続税の基礎控除内であれば、難しい計算抜きに大まかに遺産分割を考えることができます。遺言書作成でも「とりあえず遺言」といって、核となる遺言だけを決めるというやり方もあるように、相続財産に関しても「とりあえず財産把握」というやり方もありです。手が付けられずモヤモヤした感じをお持ちであれば、とりあえず大まかに把握しておくことで安心できることもあります。相続に関することでモヤモヤしたら、街のかかりつけ法律家である行政書士をぜひ頼ってください。