遺留分侵害額請求権の行使
過去の記事にも何度か登場している遺留分侵害額請求権。割とご存知の方も多いです。でも、その分だけ誤解というか、勘違いされている方もいらっしゃるので、補足的に掲載しておきます。
遺留分侵害額請求権に関する基本知識としては、兄弟姉妹には権利がないということ。次に法定相続分の半分を請求できることですね。
そこで多いのが、「遺留分侵害額請求権があるから遺言書にはその分を明記しておかなければいけない」という勘違いです。たとえば、法定相続人が妻と子供が3人で、子供の一人には相続させたくないと考えているのだが、遺留分侵害額請求権があるのでどうしてもその分を考慮して遺言書を書かなければいけないのが悔しい、といった相談です。
確かにそうしておいた方が争族になる可能性が低くなるので、おすすめです。しかし、遺留分侵害額請求権を考慮した遺言書にしなければならないわけではありません。遺言書に、相続させたくない相続人を除いた遺産分割内容を記載しても基本的には無効になりません。これは公正証書遺言を作成する場合も同じです。公証人法には、公序良俗に反する内容や法令に違反する内容は作成できないとありますが、法令違反ではありません。遺留分侵害額請求権は、あくまでも主張できる権利なので、主張するかどうかの判断は当事者に委ねられています。
その上で勘違いというよりも忘れがちなのは、遺留分侵害額請求権の請求期間です。遺留分権利者が相続開始と遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年で時効によって消滅します(民法1048条)。意外と短いので注意が必要です。知らなかった場合でも、10年を経過すると請求できなくなります。
それと請求の方法も意外と知られていません。決められた手続きがないのです。一般的には、請求相手へ内容証明郵便を送ります。応じない場合には、家庭裁判所に家事調停の申立て、あるいは地方裁判所への訴訟を考えることになります。
遺留分侵害額請求権では生前贈与との関係も出てきます。特別受益に関しては、以前の記事「特別受益って分かりにくい」を参照いただければと思います。いろいろと悩んでストレスを溜めるのは、健康にも良くありません。気軽に行政書士にご相談ください。頼れる街の法律家の名に恥じないように遺言相続のご相談に応じています。