遺言執行者の意味

 遺言執行者とは、読んで字のごとしで、遺言の内容にもとづいて相続に関わる手続きを進めていく人です。一般的には相続人が遺言の内容にもとづいて相続に関わる手続きを進めていくわけですが、遺言書の中で遺言執行者を選任すれば、遺言執行者が単独で実行できる手続きが出てきます。

 推定相続人の廃除、子の認知、財産の遺贈、名義変更、遺産分割方法の指定、所有権移転登記など、遺言内容の執行に必要な一切の権利義務になります。

 遺言書の内容によっては、反対が起きそうな内容ばかりですね。遺言執行者を選任すると、これらの手続きに関して他の相続人はできなくなります。反対しそうな相続人がいる場合、遺言書の内容をスムーズに進めるために、遺言執行者を選任しておくということも考えられます。

 肝心なのは、誰を遺言執行者にするかということですが、「えっ、私が遺言執行者!」なんて突然言われても困りますから、遺言書の中で指定する場合は、あらかじめ了承してもらったほうが良いでしょう。選任されていても家庭裁判所に申し立てをして辞任することもできますが、法改正によって遺言執行者は、遺言による復任の禁止がなければ、やむを得ない事由がなくても、自己の責任で第三者にその任務を行わせることもできようになり、士業に復任してやってもらうこともできますから、頼みやすくなったといえるでしょう。

 遺言執行者には、未成年者と破産者以外はなれます。遺言執行者を指定する人を遺言書に記載することもできますし、家庭裁判所で選任してもらうこともできます。

 とはいえ、遺言執行者になると義務もあります。遺言執行者の存在を知らずに財産を処分してしまうことも考えられるため、選任されたことをすべての相続人と受遺者に通知しなければなりません。遺言内容も相続人・受遺者に通知する必要があります。また、財産目録を作成する義務もあります。善管注意義務もありますし、手続きの進捗報告義務もあります。

 けっこう大変な役割でもありますので、報酬のことも考えておかなければなりません。金融機関や弁護士、司法書士、行政書士など、金額はピンキリですね。金額だけを考えて、知人や相続人に頼むことも可能ですが、作業と金額に折り合いがつかない場合、家庭裁判所で報酬額を決めてもらうなど、後味の悪いケースになることあり、考慮しておかないといけません。

 不動産の名義変更に関しても、債権者がいる場合には、名義変更の前に先に差押えされるケースも考えておかないと面倒なことになります。こう書いていくと、やっぱり大変な役割になってきますので、遺言書での遺言執行者選任の記載を考えるときは、どうしても必要なケースを元に考えるのが良いのではないでしょうか。

 どうしても必要なケースというのは、遺言執行者しかできないことになります。先に挙げた相続人の廃除と子の認知、その取消などの手続きです。遺言書でこれらの内容を指定した場合、必ず遺言執行者を選任する必要があります。

 それ以外の場合、遺言執行者が必要かどうかは個々の相続環境によって違ってきます(以前の記事「遺言執行者が求められるケース」もご参考に)。専門家と相談しながら遺言執行者を選任が必要かどうか、考えをまとめたほうが良いと思います。ぜひ、気軽に頼れる街の法律家、行政書士を活用してください。いつでも遺言相続のご相談に応じています。