新しい相続時精算課税制度
相続時精算課税制度が改正されて、暦年贈与と比べて何が違うのか、整理してみました。
相続時精算課税制度(以下、精算課税)は、一定の要件に該当する贈与者と受贈者間で財産の贈与を行った場合に選択できる贈与税の計算方法です。この制度を選択すると、贈与財産の累計が2500万円(特別控除)までは贈与税がかかりませんでした。今回の改正で一番大きい留意点は、精算課税を選択してから、毎年110万円までは非課税となったことです。
精算課税を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に、「相続時精算課税制度選択届出書」および受贈者の戸籍謄本など一定の書類を贈与税申告書に添付して提出する必要があります。
この制度を選択すると、その選択にかかる贈与者から贈与を受ける財産については、精算課税を選をした年分以降すべてこの制度が適用され、「暦年課税」へ変更することはできません。そういったこともあって、暦年贈与をしている方が多かったとも言えますね。ここで勘違いしがちなのは、たとえば父から子について精算課税を選択したとしても、母から子については暦年贈与を選ぶことができるということです。別の贈与者からの贈与に関しては併用ができるのです。今回の改正で精算課税でも年間110万円の控除が可能になったので、両方を併用すると年間220万円の控除が可能になっています。
もちろん、暦年贈与と同様に、たとえば父からと祖父からなど複数人の贈与を受けた場合、それぞれの特別控除については2500万円まで利用できますが、年間の控除は按分して110万円までとなります。110万円までなら申告は不要ですが、それを超える場合には贈与税の申告が必要になります。
遺言でいうところの予備的遺言、つまり相続財産を受ける人が先に亡くなった場合は、受贈者の代襲相続人が贈与者の相続時に納税義務を承継するとされているようです。もし、そうしたケースが想定されるようであれば、代襲相続人への説明も必要になってきますね。
また、精算課税を使ってその自宅を贈与する場合、相続時に小規模宅地等の評価減の特例が適用できなくなるようです。最大330平方メートルを上限に評価額を80%減額できなくなるとちょっと困りますね。こうしたことも考慮しておかないといけません。
精算課税か暦年贈与か、どちらにしても贈与は贈与ですから贈与契約書は必ず作成して、自署押印して、きちんと契約書を保存管理するようにしておくことが、問題にならないためには大切です。連年贈与とみなされる危険性を避けるためには、記述内容にも注意が必要ですね。
ざっと簡単にポイントをまとめてみましたが、早くから贈与をするなら暦年贈与のほうが効果的という試算もあります。気になるようなら、FP(ファイナンシャルプランナー)や税理士へ相談するのが良いと思いますが、行政書士兼FPという人も多いです。特に契約書作成は行政書士の専門分野です。「そうだ行政書士に相談しよう!」あなたの街のかかりつけ法律家・行政書士も、ぜひ、ご検討ください。