持ち戻し免除と遺留分
2021年11月に「特別受益って分かりにくい」という記事で持ち戻し免除について記載したのですが、具体的な例がないと分かりにくいようです。そこで今回は例を挙げて説明しておきたいと思います。
たとえば、被相続人(亡くなった方)が母親で、相続人は長男と二男の二人。亡くなった時の母親の財産(以下、相続時財産と呼びます)は1000万円。次男は10年前に被相続人である母親から2000万円の住宅購入資金の支援があり、母親の遺言書でこの住宅購入資金に関しては、持ち戻し免除の意思がされています。この場合を考えてみましょう。
住宅購入資金は特別受益に当たりますので、本来ならば2000万円が相続時財産に加算されるわけです。しかし、持ち戻し免除であれば加算しません。というわけで、相続財産は1000万円のままになります。兄弟2人ですから、それぞれの相続分は2分の1となって、それぞれ500万円を相続することになります。
一方、遺留分侵害額請求の対象となる特別受益は、相続発生前の10年間に行われたものになるのが原則です。つまり、遺留分侵害額請求権に基づく相続財産は1000+2000=3000万円となります。兄弟それぞれの遺留分はそのぞれの相続額の2分の1ですから、1500万円(各人の相続額)の2分の1=750万円になります。
遺留分を考慮すると、それぞれの相続分はどうなるのか。長男は遺留分750万円に対して500万円の相続額では、250万円不足することになります。というわけで、長男が相続財産500+250=750万円を相続し、二男は500-250=250万円を相続することなります。
持ち戻し免除があるから、特別受益分は除外される。単にそう考えて、遺留分の計算を忘れている方がいます。計算が面倒なので仕方がない面もありますが、特別受益が多い場合は特別受益者(もらった人)の相続分が0円になることもあります。くれぐれも軽視しないようにしてください。
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