家族信託と財産管理の委任契約

 当事務所で作成している家族信託のパンフレットが欲しいという要望がけっこうあります。大手の信託銀行だけでなく、最近では千葉県の地方銀行も家族信託の口座開設ができるようになったみたいで、注目度も高くなってきているようです。

 法律職は常に勉強が必要なので、家族信託の本(遺言・相続の本もですが)が新しく出れば、購入して読みます。今も読んでいる最中なのですが、その中で家族信託と比較されているのは、成年後見と遺言です。できれば財産管理の委任契約との比較などもあると嬉しいのですが、なかなか全てを比較して掲載されている本は少ないです。

 家族信託と成年後見と遺言の比較は、簡単に言えば以下のようになります。

【法的な立場】
家族信託:生前の契約
成年後見:本人や関係者等からの申立て
遺  言:民法の要式

【特徴】
家族信託:財産を渡したい人にすぐに渡せる
成年後見:法定なら裁判所が関与、後見事務には財産管理だけでなく身上監護も含まれる
遺  言:厳格な要式がある、何度でも見直しができる

【注意点】
家族信託:財産を渡したら、取り戻しは困難
成年後見:裁判所が認める財産処分は要望通りとはいかない
遺  言:遺言の執行手続きに時間と費用がかかる

 それぞれにメリットとデメリットはあるわけで、今置かれている状況などで判断するしかないのは変わりません。

 その上で家族信託の場合、単に高齢というだけでは利用できない成年後見と比べて、本人の行為能力を奪わず、欠格事由(本人の判断能力の程度に応じて、補助・保佐・後見に分類されます)も生じないないのが、良いとされます。

 遺言に対しては、トラブルが起きやすいことが指摘され、家族信託のほうがより本人の意思が反映されやすいのが、良いとされます。加えて遺言では出来ない、何世代か先までの資産継承先の指定が可能なところも良い点とされています。

 特に高齢になって行動に制限が出てきて、認知症の心配などを考えるようになると、成年後見や遺言だけでは帯に短しタスキに長しとなります。

 そうした対応を考えると、ここに財産管理の委任契約も比較対象として出てくるわけです。認知症ではなく高齢で動きにくくなった段階では、家族信託だけでなく財産管理の委任契約も有効ですし、認知症の心配には任意後見契約を併せて作成するという方法も検討の余地があります。(過去記事「財産管理の委任契約と任意後見契約公正証書」参照)

 考え得るあらゆる比較を載せていたら、相当なページ数になるでしょうし、一般の人が購入する金額にはならないでしょう。法律職は仕事ですから、関連する書籍をいろいろと買っているわけです。そう考えれると、やはり専門家に聞いた方が早いと思われませんか。パンフレットは差し上げるために作っているのですが、内容を知ることがゴールではなく、問題を解決するのがゴールです。ぜひ、問題解決のためにご相談いただきたいと思います。頼れる街の法律家、行政書士にお気軽にお声掛けください。