遺産分割で発生した所得税
長男に全ての財産を相続させる旨の遺言書により、長男がすべての遺産を相続しました。
兄弟は2人です。当然、次男には遺留分侵害額請求権がありますから、遺産の4分の1を請求できます。
遺留分侵害額請求権は、侵害者に「金銭的な補償」を求める権利です。長男には遺留分侵害額に相当する現金がなかったので、同額と評価される土地を渡したという状況です。
法改正の前でしたら、不動産など現物で遺留分を渡しても何も問題はなかったのですが、基本的に現金で渡すことになった改正後では税の問題を考えておく必要があります。
遺留分の土地を渡すといった今回のケースの場合、いったん長男が不動産を売却して、その金額を次男に渡した上で土地を買ったものとみなされます。実際に売買手続きがなくても、遺留分の手続きはあったわけですから、長男には譲渡所得として所得税がかかり、次男には土地購入により不動産所得税がかかるというわけです。
遺言を書くときに遺留分を考慮しておくことが一番なのですが、遺言者にはそれなりの理由があっての内容ですから理想通りにいかないものです。そうした場合でもまだ方法はあります。
判例では、「遺言によって遺産分割協議が禁止されている場合」「遺言執行者が選任されている場合」を除き、遺言と異なる内容の遺産分割協議をすることは事実上認められているからです。実務で、遺言内容と異なる遺産分割協議はそんなに珍しいことではありません。これは、全て遺産分割協議書が遺言に優先する、という意味ではありませんので、内容によっては注意が必要です。もちろん相続人間での意思の合致が大前提なのは言うまでもありません。
相続が発生すると、いろいろな手続きの期限に追われますし、モヤモヤした疑問があるまま過ごすと精神衛生上もよくありません。頼れる街の法律家、行政書士に気軽にご相談ください。