複数金融機関の預貯金仮分割手続
平成28年の最高裁による決定後、預貯金債権は遺産分割の対象とされ、相続人間の準共有状態として相続人は単独で払戻しすることができませんした。遺産分割がまとまらないと葬儀費用も用意できないという背景もあって、今回の改正により、預貯金債権に限り、相続人は家庭裁判所の判断を経ずに、故人(被相続人)の預貯金の一定割合の払戻しができるようになりました。
要件を整理すると
①遺産に属する預貯金債権に限り、
②相続開始時の債権額の3分の1に法定相続分に乗じた額を
③預貯金債権の債務者(金融機関)ごとに150万円の限度で
払戻しができるということです。
たとえば、妻と子供2人が相続人で、次のような遺産のケースでは
A銀行
投資信託 100万円
普通預金 600万円
B銀行
C支店 定期預金 1200万円
D支店 普通預金 600万円
妻は
A銀行では、投資信託は預貯金債権ではないので払戻しはできません。
普通預金の600万円は、×1/3×1/2(法定相続分)=100万円(<150万円) の払戻しが可能です。
B銀行では、支店は同一の金融機関として合計されますので、
C支店 定期預金 1200万円 ×1/3×1/2=200万円
D支店 普通預金 600万円 ×1/3×1/2=100万円
200万円+100万円=合計300万円(>150万円)となり、限度額の150万円 の払戻しが可能です。
B銀行のどちらの支店でどれだけ払戻すかは、金融機関と相続人の協議によります。
結論としては、妻は、A銀行とB銀行の合わせて250万円を葬儀費用等に使えるわけです。
勘違いしやすいのは、預貯金以外はダメということ、支店は異なる金融機関にならないということです。
特に同一の金融機関の異なる支店口座は、同じ金融機関として合算して計算されますので、通帳が複数あっても確認が必要です。