直系尊属の相続でよくある誤解
「直系尊属は、代襲相続がない」
よく知られた表現なのですが、ご存知でしょうか。
直系尊属とは、自分を中心に考えると、父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母など、直接の祖先の系列に当たる人のことをいいます。
代襲相続とは、相続人が先に亡くなっていた場合に、その子供へ代わりに相続権が移動することをいいます。
さて、次の場合はどうでしょうか。
亡くなった方(被相続人と言います)に相続権の第1順位である子供がおらず、第2順位の父母もいないなら、第3順位である亡くなった方(被相続人)の兄弟姉妹へ相続権が移動する。
これは正しいでしょうか?
正しいと勘違いされている方が結構いらっしゃるのですが、これは誤りです。
この場合、もし祖父母がいらっしゃるのなら、祖父母へ相続権が移動します。
直系尊属は代襲相続しないと民法(第889条)で定められています。この意味は、
父母のどちらかがご存命なら、ご存命の方が相続人になり、亡くなった方の祖父母へは相続権が移動しないということです。
同じ条文には、直系尊属に関しては、親等の異なる者の間では、その近い者を先にすると定められています。
つまり、父母(親等では第1親等)が両方ともいない場合は、祖父母(第2親等)が相続人になるわけです。
兄弟姉妹も同じ第2親等ですが、直系尊属が順位的に優先と定められているのです。
具体的には
・父母が2人ともすでに死亡している
・父母が2人とも欠格排除によって相続権を失っている
・父母が2人とも相続放棄によって相続権を失っている
といった場合に、祖父母、曽祖父母、高祖父母と、上へ上へ相続権は移動していきます。
まとめると、
父母、祖父母、曽祖父母、高祖父母など、直接の祖先が誰もいない場合に、はじめて兄弟姉妹に相続権が移動するわけです。
ますます進む超高齢化社会。
曽祖父母、高祖父母がご存命ということもありますので、よく確認することが大切です。