難病患者と遺言書

数日前の日経新聞夕刊の社会面に「父親宛て女性が遺言書」というタイトルで、ALS嘱託殺人に関する記事が小さく掲載されていました。
その中で亡くなったALS患者の女性が、貯金用途などを記した

自身の死後の手続を記した父親宛ての「遺言書」を作成していた

とありました。

センサーが目の動きを感知し、画面上の文字盤で文章を作成できる「視線入力装置」付きのパソコンを使って書き、印刷したとみられる

とも書いてありました。

遺言書ということですが、パソコンで作成してプリントされているものだとしたら、自書ではないので遺言としては法的に無効になります。無効だとしても、残されたご家族への女性の思いは十分伝わっていたと思いますし、無効自体はたぶん今回重要なことではなかったのかもしれません。詳細が分からないので何とも言えませんが、遺言に関して詳しくご存じなかったのでしょう。

遺言は残された家族への最後の愛情表現だと私は思います。よくいう争族にならないようにするためだけでなく、自分の思いを家族に伝えるメッセージでもあり、思い出と共に喪に服したい家族を煩雑な手続きに悩ませないようにする気遣いでもあります。

こうした難病を抱えていて、遺言を残したくても残せないと考えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。今回の記事を読んで、法的に有効な遺言書に関する知識をもっと多くの方に知っていただくことが大切だと思いました。

いろいろなメディア、専門士業のサイトなどで、遺言書の種類やメリットデメリットが紹介されていますので、ぜひ、検索していただきたいです。詳細はそれらを参照していただくとして、こういった自書できない方の場合、費用が掛かりますが、ぜひとも、公正証書遺言を検討していただきたいと思います。

公正証書遺言であれば、通常の費用とは別途になりますが、公証人に自宅や病院へ出張してもらうことが可能で、証人2人の立ち会いのもと、法的に有効な遺言書が作成できます。この場合、遺言者本人が署名押印できなくても、公証人が代書し、代わって押印することができるので大丈夫です。話せない場合でも通訳に話してもらうか、又は筆談(視線入力装置等を含めて)にて行うことも可能。 公証人が作成した遺言を確認のために読み聞かせることに代え、通訳人の通訳で伝えても、直接閲覧させることもできます。

「行政書士は、頼れる街の法律家」。今の日本行政書士会連合会のキャッチフレーズです。今抱えている疑問や不明なことを、気軽に相談できる法律家として、積極的に活用していただければと思います。