相続土地国庫帰属制度の統計

 法務省では相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する統計をホームページで公開しています。令和6年3月21日に公開された情報は、令和6年2月29日現在の情報です。申請総数は1761件。地目別では、宅地よりも田畑のほうが多くなっています。田畑670件で宅地655件なので、大した差ではありませんが。残りは山林が255件、その他181件となっています。

 それで令和6年2月29日現在、実際に帰属できた件数は150件。こちらは宅地が66件で、農用地が33件。そして森林5件で、その他46件となっています。申請に比べて少ないですが、制度がスタートして約1年。まだまだ申請に基づく審査の段階なのだと思われます。

 使い道がなく、売るに売れない相続した不動産を国に引き取ってもらうのが、相続土地国庫帰属制度です。とても良い制度だと思いますが、引き取ってもらうためには条件があります。建物があってはダメ。つまり、解体費用がかかる。隣の土地との境界が明確でないとダメ。つまり、測量等の手間と費用がかかる。樹木があってもダメ。伐採だけでなく、根こそぎ廃棄する費用がかかる。土地にコンクリート片などが埋まっていたらダメ。埋まっていないとはなかなか断言しにくいですよね。それでも申請してみようという当たって砕けろという方もいます。

 公開情報には却下・不承認についての記載もあります。気になるという方はぜひ、法務省の公開情報にアクセスしてご覧ください。参考までに令和6年2月29日現在の情報は、

3 却下・不承認件数(令和6年2月29日現在)

(1)却下件数
    6件
   (却下の理由)
    ・4件:現に通路の用に供されている土地(施行令第2条第1項)に該当した
    ・2件:境界が明らかでない土地(法第2条第3項第5号)に該当した

(2)不承認件数
    9件
   (不承認の理由)
    ・1件:土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地(法第5条第1項第2号)に該当した
    ・1件:民法上の通行権利が現に妨げられている土地(施行令第4条第2項第1号)に該当した
    ・2件:国による追加の整備が必要な森林(施行令第4条第3項第3号)に該当した
    ・5件:国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地(施行令第4条第3項第4号)に該当した

4 取下げ件数(令和6年2月29日現在)

   183件

  ※ 取下げの原因の例
    ・自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した
    ・隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった
    ・農業委員会の調整等により農地として活用される見込みとなった
    ・審査の途中で却下、不承認相当であることが判明した

(法務省:相続土地国庫帰属制度の統計より抜粋)

となっています。やはりキチンと条件はクリアしておかないと無理ですね。

 注目していただきたいのは、取下げ件数です。今回記事にしたかったのは、この「取下げ原因の例」の部分です。相続不動産の処理に悩むなら、遠慮せずに行政や地目関係団体に相談することも大事です。実際、私の相談案件では、自治体や農業関係団体との調整で農地が解決した例もあります。新しい制度を考えるとき、まずは公的な情報にアクセスして対策を考えてほしいと思います。けっこう参考になりますよ。

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