第三者による相続放棄の照会

 相続放棄に関しては、以前に「相続放棄の確認」という記事を掲載していますが、第三者による照会については省略していました。最近、相続放棄の確認に関して質問を受けたので、今回は第三者による相続放棄の照会についても書いておくことにします。

 第三者が相続放棄の有無を家庭裁判所に照会する場合にはどんなことを知っておいたら良いのか。①照会を行う条件、②申請に必要な書類、③照会から回答までの手順、④照会から回答までの期間、⑤料金に分けて記載したいと思います。

 大前提ですが、相続放棄の申述の有無は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で照会します。被相続人の最後の住所地は、被相続人の戸籍の附票等で確認できます。

①照会を行う条件
 これも当たり前になりますが、相続放棄の期限が死亡日から3か月なので、照会を行うことができるのは、被相続人の死亡日から3か月を経過した後になります。また、照会者は利害関係人でなければなりませんが、これは家庭裁判所で、次の②申請に必要な書類から判断されることになります。

②申請に必要な書類
 照会申請書と被相続人等目録を提出する必要があります。被相続人等目録には、被相続人の住民票の除票や死亡の事実と最後の住所地を確認するための書類などが含まれます。整理すると以下のようになります。

・照会申請書(裁判所のHPからダウンロードすることができます)
・被相続人等目録(裁判所のHPからダウンロードすることができます)
・被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
・照会者の資格を証明する書類(発行から3か月以内のもの)
 個人の場合は照会者(個人)の住民票、法人の場合は商業登記簿謄本または資格証明書
・利害関係の存在を証明する書面
 (金銭消費貸借契約書、訴状、競売申立書、競売開始決定や債務名義等の各写し、担保権が記載された不動産登記簿謄本、その他債権の存在を証する書面などのコピー)
・相続関係図(手書きでも可)
・弁護士に委任した場合は委任状(弁護士しか代理人になれません)
・照会者が法人の場合は委任状とは別に社員証明書(代表者印の押印のある提出用書面)
・郵送での返送を希望する場合は返信用封筒と返信用切手
・照会者本人が直接家庭裁判所の窓口に来る場合は身分証明書(運転免許証、保険証、パスポート等)と印鑑
・住民票及び戸籍謄本等の原本還付を希望する場合は原本還付を希望する書類のコピー

③照会から回答までの手順
 特別なことはないようですが、念のために記載しておきます。
1. 照会者は窓口に必要書類を提出し、相続放棄の有無を照会したい旨を申し出ます。
2. 提出された書類と情報を基に、家庭裁判所は照会を受理し、審査を開始します。
3. 審査が行われ、相続放棄の有無に関する結論が出されます。
4. 結論に基づき、家庭裁判所は照会者に回答を提供します。

④照会から回答までの期間
 期間に関しては、裁判所のホームページを確認すると各家庭裁判所で被相続人の死亡日によって対応が分かれているケースがあるように見られます。被相続人の死亡日がある年以降の場合は現在までの申述の有無が調査対象期間となり、それ以前の場合は、第1順位の相続人については被相続人が死亡した日から、後順位者の相続人については先順位者の放棄が受理された日から、それぞれ3か月間が調査対象期間となったりします。照会から回答までの期間は地域や家庭裁判所の負荷によって異なるようですが、通常、数週間から数ヶ月かかることがあるとされています。緊急性のある場合には、裁判所に問い合わせて手続きの進捗状況を確認することができるようです。

⑤料金
 現時点で、照会手数料は無料となっています。

 司法書士と行政書士の基本的な違いは、司法書士は法務省による国家資格、行政書士は総務省による国家資格ということです。これがあまり知られていないですね。裁判所、法務局は法務省の管轄なので、弁護士や司法書士しか手続きできないことが多いです。管轄省庁は違っても、行政書士も法律を扱う国家資格者です。法律のことを気軽に質問していただける専門家でもあります。「そうだ行政書士に相談しよう!」あなたの街の頼れるかかりつけ法律家・行政書士を、ぜひ、ご検討ください。