弁護士会照会による預貯金の情報開示

 弁護士会照会とは、弁護士が依頼を受けた事件について、証拠や資料を収集し、事実を調査するなど、その職務活動を円滑に行うために設けられた法律上の制度(弁護士法第23条の2)となっています。個々の弁護士が行うと思っている方も多いのですが、弁護士会がその必要性と相当性について審査を行った上で照会を行う仕組みになっています。一般的に(一般の方には馴染みがないと思いますが)「23条照会」とか「弁護士会照会」とか、呼ばれたりします。

 相続人間で相続財産の内容でモメたりする場合(たとえば「こんなに財産が少ないはずがない」など)、この弁護士会照会ができないかというご相談を受けることがあります。預貯金の存在を確認するのに、弁護士会照会を利用しなくても、相続人なら誰でも預貯金の照会をすることができます。2021年5月15日掲載の「銀行預金の全店調査」という記事をご参照ください。

 相続人はなぜ被相続人(亡くなった方)の口座を調査できるのか。それは相続人が被相続人の預金者の立場(地位)を承継しているからです。弁護士会照会の手続を使わなくても、相続人自身が直接金融機関で手続をすれば残高証明や取引履歴を取得することができるわけです。弁護士会照会によって預貯金を調査することもできますが、その分だけ手間やコストが余分にかかってしまいます。しかし自分でやるのは面倒なので、どうしても弁護士会照会を利用したくなるのは仕方がないことかもしれません。

 相続人が、被相続人名義の預貯金の取引履歴の開示を請求すれば金融機関は応じるのが原則ですが、金融機関が開示に応じないこともあります。その場合には弁護士会照会を利用すしても開示してもらえないケースがあります。弁護士会照会は法律で定められている制度で、原則として回答・報告する義務がありますが、照会の必要性・相当性が欠けている場合には回答・報告しなくてもよいものと考えられています。次のようなケースでは、開示を拒否されることがあるようです。

 ●5年を超える長期の履歴開示請求
 ●典型的な相続人以外からの請求(たとえば、受遺者、遺留分権利者など)
 ●払出手続書の開示
 ●(他の)相続人の預金口座

 4番目は、常識的に考えても無理だと思いますよね。相続人に開示請求する権利があるとはいえない場合には、弁護士会照会でも金融機関は開示には応じないことが多いようです。
4番目は、被相続人の口座から特定の相続人が不正に出金したことを調査するため、特定の相続人の預金口座に関する取引履歴の開示請求を行おうという場合になります。特定相続人の預金口座には実体法上の開示請求権がないため、かかる開示は認められないことが多いといえます。

 実際問題、時間が相当かかると考える必要があります。モメた相続は、なかなか進みません。そんな事例をみると、予防法務としての遺言書の必要性だけでなく、日頃からの家族(相続人)間のコミュニケーションがいかに大切か、痛感します。意外に「ウチの家族はモメない」と思っている方が多いです。その判断が大丈夫かどうか、気軽に相談してもらえばと思うわけです。ぜひ、「そうだ行政書士に相談しよう!」あなたの街のかかりつけ法律家・行政書士にご連絡ください。