銀行預金の全店調査

 ある調査によると、銀行口座の平均保有数は3.5口座らしいです。平均ですから、もっと少ない人もいれば、もっと多い人もいるわけです。転勤が多い人などは、その土地で口座をつくることもあるようですね。

 つい最近亡くなった私の親戚の家族が、「通帳がどこにあるのか分からない」と言っていたそうで、分からないままだと遺産分割も進みませんので大変です。そういう場合の対処として使われるのが、銀行口座の全店調査です。銀行に対して、同一銀行に複数の口座を持っていないか、窓口で確認する手続きになります。

 故人の郵便物や住んでいた住所などを頼りに心当たりのある銀行で照会するわけですが、郵便物だけでなく、パンフレット、名刺、タオルやボールペンなどの粗品等も銀行口座探しの手掛かりになります。ネットバンキング等を利用している方も増えていますから、使っていたパソコンにログインできるのなら、メールの履歴やブラウザの閲覧履歴やブックマーク等も確認しておきましょう。

 全店照会する際には、必要書類がありますので事前に銀行に確認しておくと便利です。一般的に必要な書類等は
 1)被相続人が死亡したことがわかる戸除籍謄本
 2)請求者が相続人であることがわかる戸籍謄本(※相続人でなければ請求できません)
 3)本人確認資料(※免許証など顔写真付きのものが確実です)
 4)実印と印鑑証明書(※6か月以内)
 5)できれば相続財産(遺産)の資料(※資料があったほうが確認しやすい)
になります。

 口座が見つかった場合は、残高証明書を発行してもられば遺産分割が始められますので、忘れずに依頼するようにします。過去3年分に遡って取引履歴を取得すれば、贈与や、お金の貸し借り等を確認でき、遺産分割協議の参考になります。残高証明書だけでなく、利息計算書もあれば相続税申告に利用できるので検討しておきましょう。

 最後に大切なことですが、全店照会するということは、口座名義人が亡くなったことを通知することになりますから、当然口座は凍結されてしまいます。口座が凍結されれば、簡単にお金をおろしたりすることはできなくなります。民法改正によって、家庭裁判所の手続きを利用せずに、預貯金の仮払いを受ける方法が創設されました。「相続開始時の預貯金債権の額(口座基準)×1/3×当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分」ということですが、法務省令で上限は150万円とされています。銀行によっては「簡易払い」という手続きが定められているところもあるようですが、前提として理解しておいてください。

 亡くなった後のいろいろな手続き、大変です。手助けが必要な場合は、まずは気軽に頼れる街の法律家、行政書士へご相談ください。