権利証と登記識別情報

 一般的に権利書、または土地の権利書と言ったりしますが、正式には「登記済権利書」です。相続の仕事で土地や建物の相続があると、親しい司法書士の先生にお願いします。いわゆる所有者移転登記ですね。無事登記が完了すると「登記識別情報」をお渡しすることになります。ここで皆さん「??」となります。「権利書」じゃなくて、「登記識別情報」? これって何ですかと質問を受けることが多いです。

 不動産登記法の改正なんて一般の人はご存知ないのが当然です。昔は「登記済権利証」を交付していましたが、改正による登記事務のオンライン化に合わせて登記済権利証はすべて登記識別情報で交付されるようになりました。もう朱色の長方形の枠の中に登記受付日、受付番号、法務局名が入った印鑑が押されている「登記済権利証」は交付してもらえません。

 ただ、現在でも旧不動産登記法時代に登記名義人に交付された登記済権利証は有効なので、相続による所有者移転登記が完了するまでは、大切に管理して扱う必要があります。ちなみに相続による所有者移転登記には「登記済権利書」は必要ありません。遺産分割協議書の場合は、①遺産分割協議書、②法務局の法定相続情報一覧図(私が受任する場合)、③不動産を相続する人の住民票、④相続人全員の印鑑証明書ですね。

 登記識別情報とは、アラビア数字その他の符号の組み合わせからなる12桁の符号です。不動産売却時や何か登記申請をする際に、この12桁の英数字を法務局に提供することで、法務局は所有者であるという本人の確認を行うわけです。不動産1筆につき1通、各所有者に発行されます。複数の相続人が不動産を相続した場合には、相続人ごと、不動産ごとにそれぞれ発行されます。

 この登記識別情報が記載された書類が「登記識別情報通知」です。下部は隠すためにシールが貼られていて、登記識別情報が記載されています。1度剥がしてしまうと、元に戻せません。所有者を証明する重要書類なので、誰かに虚偽の登記申請をされないように12桁の英数字を見られたり、盗まれたりしないようにしましょう。紛失しても再発行はできませんので、大切に保管をしてください。

 「登記識別情報通知」をお渡しした後、一番多い質問が手元に残った権利書の扱いです。相続登記完了に伴い古い権利証は効力を失いますから、法律上は「ただの紙」です。家族の思い出として保存してもいいですし、必要なければ廃棄しても大丈夫です。土地測量図や建物図面など、貴重な情報が権利書に記録されているので、保存しておくという方もいらっしゃいます。混乱しないように「登記識別情報通知」とは別にして、「資料として保管」などのタイトルをつけておくと良いですね。

 登記は司法書士しか出来ません。税金は税理士しかできません。しかし、相続に関することは何でも目の前にいる専門家に聞いて当然です。何でも質問してください。何でも相談してください。今日はエイプリルフールですが、嘘ではなく、「そうだ行政書士に相談しよう」という行政書士会のスローガンに恥じないよう、真摯にお答えします。ぜひ、頼れる街のかかりつけ法律家、行政書士をご利用ください。