包括遺贈と特定遺贈
包括遺贈と特定遺贈。遺言書の書き方で、よく出てくる言葉になります。文字通りに解釈すれば良いと思いがちで、意外と勘違いしている方がいらっしゃいますので、ポイントを整理しておきます。
まず遺贈ですが、遺言者が死後に財産を無償で譲与することをいいます。対象は相続人以外でも構いませんし、法人にも遺贈することができます。ちなみに遺贈を受ける人を「受遺者」と呼びます。
さて、包括遺贈ですが、財産の全部を遺贈すると勘違いしている方がいらっしゃいます。全部だけでなく、一部を包括的に遺贈することも包括遺贈に当たります。財産に対する一定の割合を示す遺贈を、包括遺贈というわけです。包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有することになります。つまり、相続の承認や放棄、遺産分割の規定が適用されます。相続と同じで不動産の場合は、不動産取得税はかかりません。
たとえば、以下のような遺言内容が包括遺贈になります。
A)遺言者は、その所有する財産全部を包括して長女の夫〇〇〇〇(昭和○年○月○日生)に遺贈する。
B)遺言者は、その所有する財産のうち3分の1を長女の夫〇〇〇〇(昭和○年○月○日生)に遺贈する。
※Bの場合は、相続の権利義務者の中で遺産分割協議が必要になります。
財産に対する一定の割合を示されていても、遺言書の中で「遺贈する」ではなく「相続させる」と記載されている場合は、包括遺贈ではなく、遺言による相続分の指定になります。遺贈ではなく相続になります。つまり、遺産分割協議は不要になります。ここも勘違いしやすい重要なポイントですね。
特定遺贈は、包括遺贈に比べて分かりやすいです。特定の物や権利、あるいは一定額の金銭を与えるというように、財産を特定してする遺贈(割合で示されていない遺贈)になります。
たとえば、以下のような遺言内容が特定遺贈になります。
C)遺言者は、その所有する下記の不動産を長女の夫〇〇〇〇(昭和○年○月○日生)に遺贈する。
当然といえば当然ですが、受遺者は特定遺贈の対象財産以外の財産と債務を承継することはありません。放棄する場合は、包括遺贈の場合のような家庭裁判所での手続きは不要になり、相続人等の遺贈義務者に放棄の意思表示をするだけです。放棄に原則として期限はないのですが、利害関係人が十分な期間を定めて催告したときは、その期間内に放棄の意思表示しないと承認したことになります。また相続開始前に、遺言者(=被相続人)が特定遺贈の対象財産を手放していた場合は、遺言のその部分については無効になります。特定遺贈の対象財産が不動産の場合は、包括遺贈と違って不動産取得税がかかります。
ご参考までにポイントを挙げてみましたが、まだまだ伝えたりない感もあります。もし分からないことがあるようでしたら、頼れる街のかかりつけ法律家、気軽に行政書士に質問してください。「そうだ!行政書士に相談しよう」が行政書士会のスローガンです。