限定承認
相続の方法として「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つがあります。
「単純承認」は、まさに字のごとく、そのまま相続を承認することです。だから負債などマイナスの財産があれば、プラスマイナス含めて無条件に財産を承継します。逆に「相続放棄」はいっさい財産を相続しないということで分かりやすいです。「限定承認」は、被相続人の資産状況がよくわからないというケースで、「プラスの財産<マイナスの財産」であった場合、プラスの財産の範囲内しかマイナスの財産を相続しないということです。
この「限定承認」、身近で聞いたことがあるでしょうか。実際、「限定承認」を利用することは少ないようです。日本全国の裁判所が受け付けた件数を見ると、相続放棄の申述件数が16〜18万件なのに対し、限定承認の申述件数は800~1,000件と言われています。
なぜ「限定承認」が少ないのか、理由はいくつか考えられるようです。
まず、相続人全員の合意が必要ということです。相続人全員が共同して申請するわけですが、ひとりでも「相続放棄するから関係ない」なんていう人がいたら、それでダメになってしまいます。
次に、財産目録を作成、提出するのに大変面倒だということです。被相続人の資産状況がよくわからないので「限定承認」をしようとするわけですから、当然といえば当然ですね。
さらに相続人の中から相続財産管理人を選任するのですが、手続きを行うのは大変なので弁護士に委任することになると、その費用も負担になるということです。基本的には以下のような流れになります。
1.家庭裁判所に限定承認の申述をする(相続開始から3か月以内)
2.家庭裁判所から送られてくる「限定承認受理通知書」を受領する
3.清算手続きを限定承認申述人または相続財産管理人が行う
4.官報公告を行う(5日または10日以内)
5.債権者に催告をする
6.債権者に弁済を行う
また、プラスの相続財産をお金に換えて、借金などの支払いに充てていきますが、不動産等の処分が必要な場合、家庭裁判所による形式的競売することになり、時間と手間が大きな負担になるようです。
他にも理由が挙げられると思いますが、法律で認められていても、実際に使えるかどうかは別の問題です。「こうしてみたい」と思うことも、遠慮なく専門家に相談してみてください。今年の行政書士会のスローガンは「そうだ!行政書士に相談しよう」です。気軽に頼れる街のかかりつけ法律家、行政書士をぜひご利用ください。