相続人に未成年の子がいる場合
成人年齢が20歳から18歳になりました。そこで今回は未成年の子がいる場合の相続について。遺言書があれば、遺言書の内容に従って相続手続を進めれば良いわけですが、遺言書がない場合には、不動産の所有権移転登記や預貯金の払戻し等に遺産分割協議書が必要になり、ちょっと大変になります。
遺産分割協議書には署名押印が必要ですが、これは法律行為になります。未成年者は単独で法律行為をすることができません。未成年者が法律行為をする場合には、法定代理人の同意を得る必要があります。未成年者を本人とする場合、親権者がいれば、親権者が法定代理人になります。
法定代理人には、未成年者の財産を管理する権限と、財産に関する法律行為についての代理権がありますし、法定代理人の同意がない法律行為は、取り消すことができると法律で定めれています。
民法 824条
親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。
通常は、両親が共同親権者となりますが、父母の一方が亡くなった場合には、親権者は他の一方が行うことになります。
民法 第818条
1項 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2項 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3項 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
たとえば父親が亡くなり、母親と未成年の子が相続人になった場合、遺産分割協議書には、母親が自分の署名押印、未成年の子の法定代理人として母親が署名押印、すれば問題ないのでしょうか。なんだかちょっと変な感じがしますね。これは利益相反行為となります。つまり母親には代理権はないということです。
ちなみに利益相反行為は、以下のような行為が該当します。
1.夫が死亡し、妻と未成年者で遺産分割協議をする行為
2.複数の未成年者の法定代理人として遺産分割協議をする行為
3.親権者の債務の担保のため未成年者の所有する不動産に抵当権を設定する行為
4.相続人である母(又は父)が未成年者についてのみ相続放棄の申述をする行為
5.同一の親権に服する未成年者の一部の者だけ相続放棄の申述をする行為
6.後見人が15歳未満の被後見人と養子縁組する行為
ではどうするのか。親権者が特別代理人の選任を家庭裁判にしてもらうことになります。
民法 第826条
1項 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2項 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
具体的には、子の住んでいるところを管轄する家庭裁判所に申し立てます。
申し立てに必要な費用は、子一人につき収入印紙800円分、加えて連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。なお,各裁判所のウェブサイトの「裁判手続を利用する方へ」中に掲載されている場合もあります。)
必要は書類は、
(1) 申立書(裁判所のホームページからダウンロードできます)
(2) 標準的な申立添付書類(遺産分割協議書の場合)
・未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
・親権者又は未成年後見人の戸籍謄本(全部事項証明書)
・特別代理人候補者の住民票又は戸籍附票
・利益相反に関する資料(遺産分割協議書案等)
特別代理人が行える行為は、家庭裁判所の審判で決められた行為のみです。家庭裁判所で決められた行為が終了したときは特別代理人の任務は終了します。特別代理人候補者に資格は特に必要ありません。未成年者の利益を保護するという職務を適切に行えることが必要です。通常は未成年者との関係や利害関係の有無などを考慮して、適格性が判断されるようです。
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