免税点未満の農地を相続
農地を跡継ぎ以外の兄弟姉妹にも分けて相続させる。昭和の初期、地方ではけっこう多かったようです。農地といっても、主たる耕作地ではない、わずかな畑をあげるという感じです。
税金に関することは税理士の分野なので割愛しますが、農地における固定資産税の免税点は、課税標準の合計額が30万円未満ということだそうです。この規模の農地を相続で取得した方が今の90歳前後に多いように思われます。きちんと昔の権利証などが残されていれば良いのですが、「『確か田舎に農地を少しもらっていた気がする』と生前話していました」というレベルだとけっこう面倒になります。わずかな農地でも相続財産ですから、相続登記をして、農業委員会に届出をしないといけません。
ちなみに、売買や贈与に基づく農地の所有権移転には農地法の許可が必要になりますから、所有権移転登記申請をする場合にも農地法の許可書の添付が必要ですが、相続登記の場合にはそういう手間がないのは助かります。
とはいっても、平成21年の法改正で、農地法の許可が不要となる場合でも、農業委員会に届出が必要とされるようになりました(農地法3条の3)。この届出は、農地を相続したときから10か月以内に行わなければならないとされています。届出をしなかった場合には、10万円以下の過料(罰金のこと)となるので注意が必要です。
固定資産税通知書が届いていれば良いのですが、免税点未満になっていると税務署からの連絡はありません。ほっとけば良いというわけにはいきませんので、「確か田舎に農地を少しもらっていた気がする」という土地の存在そのものから調べることになります。出生時の戸籍などから市町村を特定して、名寄帳を取り寄せて確認し、法務局で全部事項証明書を取得して把握するという流れです。加えて市町村から固定資産評価証明書を入手すれば、相続登記に進められるのですが、気になるのは、相続する農地はいったいどこなのか、ということです。
法務局の公図や地図で確認するわけですが、なかなか分かりずらい場合には、全国農地ナビ(https://www.alis-ac.jp/)が役立ちます。判明した農地の地番で探すわけですが、航空写真でも確認できるので「こんなところだったんですね」と一目瞭然です。その上でグーグルMAPで確認してもいいですね。相続手続きにはあまり関係ないようですが、そういう気持ちの整理も相続には大切だと思います。
相続した農地は、買い手もいないような農地が多く、どうしたものかと悩む方も多いようです。農業委員会への所有権移転の届出(農地法第3条の3の規定による届出)の中には、農業委員会によるあっせん等の希望の意思表示ができるものもありますので、検討に値します。その上で全国農地ナビへの掲載もしてもらえたりします。
相続手続きは、意外に時間と手間がかかるものです。自分でやった方のほとんどが「大変な目にあった」とおっしゃいます。仕事をされている方にとっては、時間の損失は馬鹿にできません。面倒な相続を避ける士業もいます。相続を扱う士業は面倒を苦にしない方が多いように思います。「そうだ、行政書士に相談しよう!」という気運を全国標準にしたいと日本行政書士会連合会会長が言っていますが、その通りですね。とりあえず、相続を扱っている行政書士に相談してみてください。