遺産の使い込みと遺産分割協議

 相続に問題がある場合には、行政書士は相続業務を扱えません。これは弁護士業務になります。

 しかし、問題があるかどうか、最初から分かっていれば良いのですが、途中で判明することもあります。だから弁護士から見たら、「相続業務は最初から弁護士に依頼しましょう」となるわけです。もちろん問題がなければ、費用的なことも含めて、弁護士以外のほうがユーザーフレンドリー(表現が微妙になるのでこんな言い方になってしまいましたが)ともいえるわけです。

 前回に遺言書がなかった場合の不動産の相続には、遺産分割協議書が必要だという記事を書きました。この遺産分割協議がなかなか進まないケースのひとつに、遺産の使い込みがあります。故人の預金通帳を見たら、なんだか知らないところで引き出されているような場合です。

 相続人の一人が疑わしくて、その本人が使い込みを認めれば良いのですが、否定したら、裁判では他の相続人に使い込みの立証責任が課せられます。

 遺産分割調停を行っても、意見書を作成したり、証拠資料を準備したりするのは簡単ではありませんし、裁判になると預貯金の使い込みに精通した弁護士でなければ難しいといわれています。どちらにしても長期化して、解決するのに数年間を要することも珍しくありません。

 使い込みを認めたとしても、遺産分割協議の内容に納得いかなければ押印されないというケースも出てきます。やっぱり弁護士にお願いするのがいちばん良いとなってきますよね。

 こうした状況は全て問題が起きた後、つまり事後法務と言えます。私たち行政書士は予防法務の担い手ということですから、「まず問題が起きないようにしておきましょう」と財産管理の委任契約、任意後見契約公正証書、死後事務委任契約、公正証書遺言など、相続時に問題が起きないように事前に公正証書の作成をお勧めしているいるわけです。

 簡単にできると思っていて案外難しいのが相続の話です。自分で問題ないと考えていて後々問題になることが多いこともあります。行政書士だけでなく、税理士、司法書士、弁護士、相続を扱っている身近かな専門家に相談しておくのが賢明だと思います。数ある相続を扱う士業の中でも、行政書士は頼れる街の法律家として、親身になって相談者に寄り添うことを旨としています。遺産相続の分配に何か悩みがあるようでしたら、ぜひ、お気軽にご連絡ください。