遺言書が有効でもモメるって、どういうこと

 遺言書の有効無効は、理解しにくいところがあります。無効とされる典型例は、遺言者に意思能力がなかった場合と法律で規定された方法に沿って遺言書が作成されていない場合です。

 逆に言えば、意思能力があって法律で規定された方法に沿って遺言書が作成されている場合には、その遺言書は法定に有効ということになります。言い換えれば形式的には有効ということですね。

 だから内容に関する有効無効とは別な話です。

 よくあるのは、家庭裁判所で検認を受けたのですがモメています、という話です。検認の目的は、遺言書の形状、加除訂正等の状態、日付、署名等の遺言書の内容を明確にして、その後遺言書の偽造や変造を防止するためる手続です。つまり遺言書の検認は、あくまでも遺言者が書いたものだと家庭裁判所が認めたということなのです。内容的に問題ありませんということではありません。

 たとえば、配偶者の妻に財産の1/2にあたる家を、同居している長男、家を出ている次男、それぞれに財産の1/4ずつ相続させるという内容で、妻が亡くなった時には妻に相続させた1/2にあたる家を長男に相続させる、という遺言内容だったとします。遺言者に意思能力があって遺言書の形式に不備がなければ、検認は受けられます。誰もが問題なく終わったと思いますよね。しかし、妻が亡くなった場合の遺言内容は、二次相続とか跡継ぎ遺贈といって原則的に内容が無効となります。

 何年後かに配偶者が亡くなって、長男が家を相続する際に、次男がなんとなく変だということでモメてしまう可能性があります。実は似たような例がけっこうあります。遺産分割協議で解決できれば良いのですが、モメてしまったら弁護士に相談するしか手がなくなるのが現状です。

 自筆証書遺言保管制度を利用して法務局で受け取ってもらっても、内容が認められたということではありません。自筆証書遺言づくりは形式的なことだけでなく、内容的にも精査して作成する必要があります。「大丈夫だろう」ではなく、「大丈夫!」という安心を得るために、ぜひ遺言書作成に行政書士をご利用ください。