国際相続と反致

 先日、ご主人が亡くなって、外国人の配偶者とお子様が相続人ということで、もし、外国人の奥様が亡くなったら、相続はどうなるのかというご相談を受けました。

 日本在住で、配偶者の方が日本国籍を持たれていれば、一般的な相続となるのでわかりやすいですよね。簡単にお答えできなかったのは、配偶者が「日本人の配偶者」として在留資格で日本に住んでおられる場合、国籍がどこの国かということが分からないという点です。

 お話を聞くと中国の方らしいのですが、これもまた、中国は、事実上、中華人民共和国と中華民国(台湾)が存在していますので、どちらの国籍なのかを確認する必要があります。

 外国の方が亡くなった場合の相続について、日本では、法の適用に関する通則法というものが定められていて、「相続は、被相続人の本国法による」と規定されています。つまり、外国の方が亡くなると、日本の法律ではなく、その外国の方の国籍のある法律が適用されることになるのです。

 中華人民共和国の場合は、法律で「法定相続については、被相続人の死亡時の常居所地の法律を適用する。ただし、不動産の法定相続については、不動産所在地の法律を適用する」となっているようで、原則日本法が適用されるわけですが、不動産に関しては日本国内にあれば日本法が適用されるとなっているようです。

 このように本国法に日本法を適用すると規定されている場合を、「反致(はんち)」と呼びます。日本では本国法を適用すると書いてあり、本国法では日本法が適用されると書いてあるので、結局、日本の法律が適用されるわけです。

 一方、中華民国の場合は、「相続は、被相続人の死亡の当時の本国法による」となっているようで、日本で死亡した場合でも、中華民国の法律が適用され、中華民国の法律に定められた相続手続きになります。つまり、日本の相続手続をしてしまうと問題になります。

 国際結婚も珍しいことではなく、これから国際相続も増えてくると思われます。どの国の法律を適用すべきか。日本以外の国の法律ではどのような手続きになるのか、すぐには分からないことが多いです。国際相続に関しては、専門家に相談しながら注意して進めていく必要があります。