公図(こうず)と字図(あざず)
「公図」なんて、日常生活では聞かない言葉ですが、土地の相続等があると出てくる言葉です。明治初期の地租改正のときに作成された地籍図を基に作成された、登記所に備え付けられている土地の図面になります。土地の形状や地番、道路、水路や隣接地との位置関係がわかるように作られたものです。
不動産の世界では、「地図」は不動産登記法第14条で規定されている精度の高い地図のことになり、「公図」は地図に準ずる図面のことで、精度が低い地図という位置づけになります。「地図」のほうは、一般的な言い方の地図と区別するために「法14条地図」「法14条1項地図」と呼ばれるようです。「公図」は「法14条4項地図」なのですが、紛らわしいので「公図」という名称で呼ばれています。
法14条地図は、地籍調査等に基づいて作成されるもので、一定以上の精度がある信頼できる図面ですが、地籍調査が行われている地域は大変少なくて、取得できる地域が限られています。一方、地図に準ずる図面である公図は、法14条地図が備え付けられるまでの間、これに代えて登記所に備え付けられる図面となるわけです。
「公図」は、境界を記載しておらず、面積を示しているものではありませんが、土地の位置、形状、地番を示しているので、面積や隣地との関係等を確かめる為の必須の書類となっています。作成された時期が古いものでは明治時代の地租改正の時、もしくは明治20年の地図更正の時ということもあり、土地の形や面積が実際と違うということはよくあり、現地調査が「公図」をもとに行われたりします。「字図」とは「公図」のそんな昔の呼び方です。
…と、細かい説明になりましたが、先日、この「公図」をもらうために法務局に行ったのですが、「登記は確かにされているが公図がない」という返答で、そんなことがあるのかと驚き、困ってしまったという次第です。遠方の土地だったので、現地の法務局に確認して欲しいと言われて、問い合わせたのですが同じ返事でした。
対象が農地ということもあり、土地区画整理、土地改良、地図整備作業などで登記簿記載地番が不明になったと思われます。面積が小さいのでずっと非課税だったことも不明になった要因かもしれません。現地法務局の担当者は、「過去の『字図』をたどって見比べれば、おおよその場所が分かるかもしれない」ということでしたが、土地勘のある地元の土地家屋調査士等、専門家に頼むしかないでしょうし、それで判明するかどうか。
農地は農地法による規制もありますし、けっこう処理が大変です。固定資産課税明細書等に農地や山林の記載があって、どう相続するのか考えておられないなら、早め早めに専門家にご相談されることをお勧めします。
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この記事へのアクセスが多いようなので、後日談を記載しておきます。
結局、場所を特定することは行われず、農業委員会の許可も得て、自治体に寄付することになりました。すべての関係者にとってスッキリした結果となり、とても良かったと思います。ちなみになぜ登記が残っていたのか、その理由は根抵当権が付いていたからです。もちろん、根抵当権の抹消手続き後の寄付になります。