相続放棄と遺贈
3回前の「配偶者に対する相続税額の軽減と相続放棄」という記事を掲載しました。もっと相続放棄と遺贈の関係が知りたいということで、改めて整理しておきたいと思います。
たとえば被相続人の死後、だいぶ経ってから遺言書が発見された、なんてことも珍しいことではありません。遺言書に相続放棄した者に遺贈する内容があった場合、遺贈を受けられる場合と遺贈を受けられない場合があります。
相続放棄した者に特定の財産を相続させる内容(特定遺贈といいます)の場合には、遺贈を受けることができます。相続放棄と遺贈の関係でいえば、別の問題となり、相続放棄により「相続人」としての権利や義務は放棄したとしても、それによって「受遺者」の権利を放棄したことにはならないからです。
もちろん、遺贈を放棄することもでき、遺贈の放棄は法律上、特に決まりはないので内容証明郵便等で意思表示するだけで可能です。
一方、遺贈を受けられない場合のひとつが、遺贈が無効という場合です。相続放棄は被相続人の多額の債務を免れるために行うことが多いですが、相続放棄することで債務を相続せずに、その上で遺贈によって財産だけを受け取れるように、被相続人と相続人が結託していたような場合などです。
つまり、債権者を害する行為として遺贈が詐害行為取消権の対象となる。あるいは遺贈が信義則や公序良俗に反して無効となるというケースです。
もうひとつ、遺贈が受けられない場合で注意しなければならないのが、包括遺贈です。「全財産を与える」または「全財産の2分の1を与える」など一定割合の部分を示した内容の遺贈(包括遺贈といいます)の場合は、包括受遺者は相続人と同一の権利義務があるとされています。簡単にいえば、相続人と同一に扱われてしまうということです。
相続人と一緒の扱いですから、相続放棄をしていても包括受遺者の立場として債務も含めて承継してしまいます。包括遺贈も放棄はできますが、相続放棄と同じ扱いで、「自己のために包括遺贈があったことを知ったときから3か月以内」に「家庭裁判所の審判」が必要となります。
相続放棄と遺贈の関係、お分かりいただけたでしょうか。行政書士は遺言書原案の作成をお手伝いしますが、遺言書の内容について判断に迷うことがあるなど、相続に関するご相談・手続きにもお応えしています。判断に迷ったら、まず専門家に相談することをオススメします。