預貯金口座への付番

 略称で「口座管理法」とか「預貯金口座管理法」と呼ばれている「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律(令和三年法律第三十九号)」が4月1日から施行されました。預貯金口座への付番というのですが、これは任意で預貯金者が金融機関にマイナンバーを届け出ることで、預貯金口座にマイナンバーを付番することができることを意味します。

 まだまだマイナンバーを利用されていない高齢者も多いのですが、この制度、相続時の手続にはとても便利な制度なのです。(もちろん、生前に手続きする必要があります)

 どういうことかというと、取引のある銀行にマイナンバーで口座を管理することを申請すると、その銀行で契約している定期預金や外貨預金などすべての口座がひも付けされて管理されるだけでなく、預金保険機構に申出すれば、すべての金融機関に口座の有無を照合して、口座がある金融機関すべてがマイナンバーでひも付けされるということです。
(この制度と似た制度で「公金受取口座登録制度」がありますが、こちらは給付金等を受け取るために預貯金口座を国に登録する制度でまったく別の制度です。)

 すべての預貯金がひも付けされると、国が自分の財産を見放題になるのでは、と心配になりますが、従来より、国が預貯金者の口座情報を確認できるのは、法令に基づき、必要な社会保障の資力調査や税務調査などを行う場合に限られていて、これら調査等以外で、国が預貯金者の口座情報を確認することはできない仕組みになっています。

 なぜ、相続時にメリットがあるのか。相続時に被相続人の預貯金口座を迅速に特定できるため、手続きがスムーズに進みます。全ての金融機関の口座情報が一元的に把握できるため、口座の見落としが減少します。ということは、相続財産の全容が把握しやすくなり、不正行為や隠し資産のリスクの減少が期待できます。もちろん、相続人や遺族が金融機関を一つずつ訪れる手間が省けますし、相続税が発生する場合には税務当局とのやり取りもスムーズに進む可能性が出てきます。通帳やキャッシュカードが見つからなくても、マイナンバーで手続きができるというのもリスク軽減になりそうです。

 利用の申請には、「本人確認書類」及び「本人のマイナンバーが確認できる書類」が必要となります。詳細は、届出をする金融機関にてご確認ください。マイナポータル経由でも、一度に複数の金融機関へ、マイナンバーを届出できるようになるそうですが、2024年度末頃を予定しているようです(あくまでも予定です)。マイナポータルの利用には、アクセスできる端末(スマートフォン等)に加え、マイナンバーカードが必要になるので、高齢者には難しいかもしれません。

 新しい法律は運用面やプライバシーの保護といった課題が出てくるものです。利用するかどうかは別にして、そういう制度があるんだという知識はもっていて損はありません。相続が気になり始めたら、専門家に気軽に聞いてみましょう。行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。キャッチフレーズは「そうだ行政書士に相談しよう!」、お気軽にご利用ください。