長生き時代の相続
23年の政府税制調査会の「わが国税制の現状と課題」によれば、被相続人における80歳以上の割合は、1986年当時は約4割でしたが、2019年には約7割となっています。寿命が伸びていることは良いことですが、その分、相続人の年齢が高齢化しているようです。相続財産を受け取る相続人もまた高齢者なので、老老相続と呼ばれています。
一方、長生きして後期高齢者になると配偶者や子がいなくなる方も増え、生涯未婚の方を含めて、おひとり様も増えるようです。内閣府が23年に公表した高齢化社会白書では、60歳以上の世帯が金融資産の6割以上を保有しているというデータもあります。高齢になると先々の生活のリスクを避けるために、消費よりも貯蓄が多くなる傾向にあるようです。つまり、親の相続財産を使うよりも貯めておく傾向ということですね。なかなか消費拡大にならない原因のひとつとも言われています。
相続人がいない場合、相続財産はどうなるのか。裁判所が選んだ相続財産清算人が債務などがあれば精算して、残りの財産は国庫に帰属することになります。ちなみに2012年度に比べて、2022年度の相続人不在による国庫帰属の額は約2倍だそうで、もうすぐ800億円に迫ってきているそうです。次の相続人がいないのであれば「後は野となれ山となれ」でもいいのでしょうが、せっかく働いて得た財産ですから、希望に沿った処置をしたいものです。いろいろな方法を聞くなかで、希望に合った方法が見つかる可能性があります。たとえば、
遺言を残すことで遺贈寄付をすることができます。趣味をお持ちなら、そういう関係先に寄付できるとしたら満足のいく財産整理になるかもしれません。遺贈寄付の受け入れ先も増加しています。ここもいいなと思える遺贈先が見つかるかもしれません。もちろん注意すべき点もあります。多くの場合、不動産や株式といったものは受け付けてもらえず、現金のみというところが多いです。
どちらにしても自分の財産を一度整理してみて、目録を作ることを推奨します。金融機関で長年取引がない「休眠預金」がないか(休眠預金等活用法の施行によって、10年以上取引がないと民間公益活動に活用されることになります)。人目につかないように保管している「秘蔵財産」はないか(領収書や鑑定書はあるのに現物が見つからないことがよくあります)。相続人がおられる場合なら、本当に助かると思います。
生きてきた証である財産。どうしようか悩むのは、いろいろな整理の方法が分からないからではないでしょうか。相続が気になり始めたら、専門家に気軽に聞いてみましょう。行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。キャッチフレーズは「そうだ行政書士に相談しよう!」、お気軽にご利用ください。