事業承継での株式の相続
企業オーナーといってもいろいろです。事業承継が問題になるのは中企業になるでしょうか。今回は事業承継を考えている企業オーナー向けの記事になります。
「公平な相続」と「安定した経営」は両立しにくいようです。親の立場からしたら財産は均等に渡したくなるのは当然の心理だと思います。だから相続人間の公平を重視して所有株式を分散相続させるケースがあるようです。しかし、この判断が会社の意思決定に深刻な影響を及ぼすことがあり、注意が必要です。もちろん、相続するのが一人だと問題はないですが。
会社法では、株主総会の決議には内容に応じた議決要件が定められています。たとえば、定款変更、合併・会社分割、事業譲渡、解散などの重要事項は「特別決議」が必要とされ、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が求められます(会社法309条2項)。株式が相続人間で分散し、いずれの相続人も3分の2以上の議決権を確保できない場合、たとえ全員が親族であっても、意見の対立が生じれば重要な経営判断ができなくなります。当然、一人の反対で特別決議が否決される事態もありますよね。単独で行使できる相続人がいれば問題が起きないことは、被相続人であるオーナーも分かってはいるのでしょうけど、株式の分散相続を考えてしまうのは不思議ですね。
また、取締役の選任・解任は、原則として株主総会の普通決議、つまり議決権の過半数で行われます(取締役の選任:会社法329条1項、解任:341条)。過半数を単独で持つ株主がいない場合は、経営陣の刷新や後継者への経営権移行がスムーズにできず、会社運営が停滞するリスクが出てきます。
他にも、株主が行使できる主な権利として、一定割合以上の議決権を前提とするものがあります。株主総会の招集請求権(原則として議決権の3%以上、会社法297条1項)とか、議案の提案権(同じく1%以上または300個以上の議決権、会社法303条2項とか)、取締役の責任追及のための代表訴訟提起権(6か月以上保有、会社法847条)などなど。やっぱり、これらの権利を単独で行使できる相続人がいないと大変だと思います。
つい「誰がどれだけ相続するか」を考えてしまいがちですが、事業承継において重要なのは「その結果、誰がどの経営判断をできるのか」という視点だと思います。もちろん遺言や生前贈与、種類株式の活用など、事業承継の方法があります。それらも検討すべきだと思いますが、今回は株式の相続に注意!という視点で記事にまとめてみました。株式の分散は、相続の公平を保つ一方で、経営の不安定化を招く可能性があることがご理解いただければと思います。
事業承継となると銀行関係、税理士先生へのご相談が多いと思いますが、気軽に相談できる行政書士もお忘れなく。「そうだ行政書士に相談しよう!」行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。
