冬場のお葬式と相続手続き

 関東地方の場合、冬場の12月から2月には死亡から火葬まで8日以上かかったという人が2割弱いるという調査があるそうです。昨冬は東京都内で15日かかったという例もあるとのこと。私自身、一昨年前に身内のお葬式で、地元(千葉県松戸市)の火葬で待たされました。都市部でのピーク時には2週間以上待たされることが常態化しかねないそうです。

 原因のひとつは、やはり人材不足のようです。厚生労働省によると、通夜や告別式を運営する「葬儀師」とご遺体の火葬や収骨を担う「火葬係」を合わせた求人倍率は昨年度で7.6倍で、全産業平均の5.6倍にあたるとのことです。

 そんな記事をご覧になって、2週間以上待たされることで相続手続きに影響は出ないのか、そんな質問をいただきました。

 結論から言うと、火葬待ちが2週間以上になっても、死亡届や火葬許可証の発行が遅れるわけではないため、相続手続そのものは開始できます。相続は死亡の瞬間に開始するため、火葬の遅れ自体で「相続開始日」が変わることはありません。死亡届は7日以内に提出なので火葬待ちとは無関係に処理されます(死亡日は医師が作成する死亡診断書などで確定されます)。死亡届が受理されれば戸籍に反映されますが、自治体によっては反映まで数日〜1週間程度かかることがあるようなので、そこはちょっと注意が必要かもしれません。

 火葬と関係なく相続手続きは開始できるとはいえ、やはり火葬が終わらないと、ご遺族としてはなかなか手につかないのではないでしょうか。遺品整理や財産調査が遅れると、熟慮期間が実質的に短くなる可能性はあります。特に相続放棄や限定承認は「自己のために相続開始を知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述が必要なので、実質そんなに余裕はありません。

 また亡くなった方が個人事業主などで所得税の確定申告が必要な場合、通常の確定申告とは別に、死亡日までの所得について準確定申告を行う必要があります。この場合は被相続人の死亡日の翌日から4か月以内です。火葬待ちの期間が長く、その間の事務処理や葬儀後の整理に時間を要すると、準備期間が圧迫されやすいですね。

 そうしたリスクを回避するためには、相続に必要な書類とは何か、財産は把握しているのか、そうした情報収集を早めにやっておくことをおすすめします。私たちがやっているような無料セミナーに参加したり、お近くの相続を扱っている専門家に聞いたりすることもいいですね。行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。「そうだ行政書士に相談しよう!」分からないことがあればお気軽にご質問ください。