公正証書遺言のデジタル化
2025年10月1日から「公正証書のデジタル化」が始まりました。公正証書遺言についても当然対象となっています。遺言作成や保管の仕組みが時代に合わせて変わることになりますが、果たして遺言作成者の対象のほとんどを占める高齢者にとって便利なのかどうか、どうなんでしょうか。確かに、従来の紙ベース中心の制度からデジタル化になると、電子的な作成・保存・検索が可能となり、利便性と安全性が向上するのですが。
一般的なデジタル化の特徴としては、①電子作成、②電子保管、③検索・閲覧の3つといえるのではないでしょうか。
①電子作成に関しては、自ら作成するような勘違いをしそうですが、従来通り公証人が遺言者の意思を確認し、口述を受けて作成という原則です。公証役場に来所して印鑑証明書等の書面による本人確認という従来の方法に追加して、電子データに電子署名、電子証明書を付けて、インターネットからメールで送信して、来所しなくても電子的に本人確認ができるようになりました。作成にあたってはウェブ会議に参加して作成する方式になります。
②電子保管に関しては、原則として電子データで作成されるので保存も電子データになります。ただし、法律上、紙の作成が必要な場合や、添付書類がPDF化できないといったデジタル化が困難な場合は紙になるようです。公正証書は正本と謄本が交付されるわけですが、電子データだけでなく紙の書面での交付も可能になっています。電子データの交付はメールの受信の他、自前のUSBメモリー等を使ってデータを受け取ることもできるようです。
③検索・閲覧に関しては、すでに公正証書遺言の検索システムがあり、全国の公証役場において検索が可能になっています。今回のデジタル化で新たに追加されるサービスがあるのか、今のところ新しい情報を探し出すことはできませんでした。自筆証書保管制度がありますから、同じような利便性が求められると思うのですが。
今回のデジタル化によって、手数料も変わっています。正本・謄本の電子データでの提供は、1通2500円。紙の書面での交付は、用紙1枚当たり300円。どちらが安いのか、ケース・バイ・ケースになりますね。ちなみに死後事務委任契約公正証書の場合は、通常の委任契約の半額になっています。身寄りのない高齢者等にとって負担の軽減がなされたようです。
将来的に相続登記や戸籍情報との連携が期待されます。それとデジタル化の大前提として、利用者の通信環境の安定が必須です。電波が弱いと手続きが中断する恐れありますからね。と、ここまで書いてきて、やはり高齢者には敷居が高いように思えます。
新しい制度は、なかなか全貌が掴みにくいです。実務のポイントにしても、実際の利用された声などが出てこないと分かりにくいです。私もこれから注目して、情報収集していきたいと思います。「そうだ行政書士に相談しよう!」行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。分からないとは調べます。お気軽にお尋ねください。
