遺言できること
相続関係のセミナーで、遺言書の書き方といったテーマはけっこう人気です。遺言書には厳密な形式があって、違っていると無効になるわけですが、その前に民法で「遺言でできること(遺言事項)」として規定されている内容を理解しておくことが大切です。今回は、遺言事項について整理しておきたいと思います。
民法では、遺言によって行うことができる事項(=遺言事項)が列挙されており、それ以外の内容を遺言に書いても法律的な効力は生じません。実務上重要な内容を4つの視点からまとめておきます。
① 相続に関すること
1)相続分の指定(民法902条):各相続人の相続分を指定できる。
2)遺産分割方法の指定(民法908条):具体的にどの財産を誰に与えるかを指定できる。
3)遺産分割の禁止(民法908):相続開始から最長5年間、分割を禁止できる。
4)遺産分割の方法を第三者に委託(民法908条):信頼できる第三者に決定を任せることも可能。
② 遺贈・寄附に関すること
1)遺贈(民法964条以下):特定の財産を相続人や第三者に無償で与える。
2)負担付遺贈(民法1002条):財産を渡す代わりに一定の義務を課すこともできる。
③ 相続人に関すること
1)推定相続人の廃除(民法893条):著しい非行がある子や配偶者などを相続人から外す。
2)廃除の取消し(民法894条):後に許す場合には取消しができる。
3)認知(民法781条2項):婚外子を認知できる。:未成年後見人・未成年後見監督人の指定(民法839条・848条)
④ その他の身分行為など
1)遺言執行者の指定(民法1006条):遺言の内容を実現するための執行者を指名できる。
2)祭祀承継者の指定(民法897条):家督相続に代わる、墓・仏壇など祭祀財産の承継者を定められる。
たとえば、葬儀の方法、財産の使い道の希望などは、付言事項として遺言書に記載できますが、法律上の拘束力はありません。この付言事項は、一般的に相続人や遺族に向けた想いや希望を伝えるために使用されます。実務ではとても重要で、遺族間の争いを防ぐ「気持ちのメッセージ」として活用されています。
実務でよく使われる付言事項としては、相続人への感謝・配慮、遺産分割の内容に関する補足説明、葬儀・埋葬・供養に関する希望や個人的な思いを伝えたりします。法定期拘束力はないとはいえ、遺産分割の争族防止に役立ちますし、相続人が遺志を尊重する可能性が高まります。
遺言書と一緒に考えてほしいものとして、エンディングノートがあります。遺言以外の生活情報・心情・希望を補足する位置づけになります。想いの伝達だけでなく、相続手続きに使用する情報など、併用することで相続手続きの円滑化に大きな効果があるので、ぜひ利用して欲しいですね。
財産を開示することになる遺言作成、分割に伴う家庭内の事情もあるなど、なかなか相談しにくいですよね。二の足を踏むのは当然のことだと思いますが、士業には守秘義務がありますので安心して相談して欲しいと思います。「そうだ行政書士に相談しよう!」行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。どうぞお気軽にお声をかけてください。