相続財産に関する費用
前回、「葬儀費用と相続財産」について記載しました。葬儀費用や相続税は、原則として「相続財産に関する費用」には含まれません。葬儀費用は喪主が、相続税は各相続人が負担するのが一般的です。ただし相続人間で合意があれば、これらの費用も遺産分割協議の中で調整することは可能とされています。
ここでいう「相続財産に関する費用」とは、民法885条に定めがあります。
(相続財産に関する費用)
第885条
相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。
具体的に記載されているわけではないので分かりにくいですよね。相続開始後、遺産分割が完了するまでの間に発生する、相続財産の管理・維持・処分などに必要な費用を指します。条文では「その財産の中から支弁する」とされており、相続人が個人的に負担するのではなく、相続財産から支払うということです。
一般的には以下のようなものが該当します。
•固定資産税:相続財産に含まれる不動産に対する税金
•火災保険料:相続財産の保全のために必要な保険料
•修繕費:老朽化した建物などの維持・修理にかかる費用
•保存登記費用:不動産の名義変更や保全のための登記手続き費用
•鑑定評価費用:不動産や美術品などの価値を評価するための費用
•財産目録作成費用:相続財産を整理・把握するための資料作成費
これらの費用は、被相続人の生前の債務、つまり亡くなった方が生前に義務としてやるべき行為ではないため、通常の債務控除の対象とはなりません。ただし、相続財産が負担すべき費用とされており、相続人が立て替えた場合は、法定相続分に応じて他の相続人に求償(=請求)することが可能です。もちろん相続人の過失によって発生した費用(例:管理不備による損害など)は、その相続人が負担することになります。
法律の条文からではなかなか判断が難しいですね。トラブルにならないようにするには法律を知っておく必要があります。でも自分で調べても分かりにくい。そんなときは専門家に聞いてみましょう。「そうだ行政書士に相談しよう!」行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。どうぞお気軽にご相談ください。