葬儀費用と相続財産
最近は家族葬が増えてきていて、葬儀に費用をかけない傾向にあるようです。そういう相続人が増えるほど、立派な葬儀をしてあげたいという喪主とのギャップは大きくなってきます。
相続財産と葬儀費用の関係について、法律上に明確な規定がありません。判例や学説も分かれているようです。葬儀を取り仕切る喪主が負担すべき。各相続人が負担すべき。相続財産から負担すべき。一般的には葬儀費用は喪主が負担することになります。喪主にとっては相続財産から負担したいと考えるのも一理ありますが、葬儀費用は被相続人(亡くなった方)の死亡後に発生する、喪主と葬儀社との契約による債務(=葬儀費用)なので契約者が負担すべきという理屈になります。
もちろん相続財産から葬儀費用を支払うことは可能ですが、事前に相続人全員で話し合い、合意を得ておくことが望ましいです。2012年の名古屋高裁の判決では、亡くなった者があらかしめ自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず、かつ、亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担について合意がない場合には喪主負担になると判断されています。
ここでいうところの契約には、一般的には死後事務委任契約があります。葬儀費用を遺産から確実に支払いたい場合に、葬儀の手配や費用負担を委任する方法のひとつです。2023年9月16日に掲載した記事「遺言執行者と死後事務委任契約受任者」を参考にしてください。
遺言書に葬儀費用について書いておくという方もいますが、遺言書に葬儀費用について記載しても、法律で定められた遺言事項ではないため、法的効力はありません。記載すること自体に問題はありません。遺言書の付言事項として「葬儀費用は相続財産から支払う」など、葬儀費用の負担や希望について記載することで、相続人の間で故人の意思を尊重するきっかけになる可能性がありますし、実際に遺言者の意思に従うことが多いようです。
ちょっとしたことで残された家族の仲が悪くなってしまっては、故人も浮かばれません。亡くなった後にトラブルを起こさないためには家族がどんな考えでいるのか、日頃のコミュニケーションが大切になってきます。そのためにも実際にどんなトラブルが起こりやすいのか、専門家の話を聞いておくことも大切になってきます。「そうだ行政書士に相談しよう!」行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。どうぞお気軽にお声をかけてください。