遺産分割協議書は絶対なのか
一般的に、署名押印された遺産分割協議書の表記が法的に間違っておらず、印環証明書もある場合、記載されている相続財産の分配に異議申し立てはできません。協議書に署名・押印していれば、自らの意思でその内容を認めたことになるからです。そうご説明するわけですが、では絶対かと言われると返答に困ってしまうわけです。つまり、絶対に無効にならないとは言い切れません。
つまり「意思表示の瑕疵(かし)」の問題です。たとえば、協議書が「形式的な同意」で実質的に不公平であった場合です。遺産分割協議を相続人の一人が取り仕切り、他の相続人が内容をよく理解せずに押印したようなケースになります。極端に不公平な分配だった場合、後から「意思表示に瑕疵があった」と主張して、協議の無効や遺留分侵害額請求をしてくる可能性があります。
他にも遺産分割協議とは別に、生前贈与がある場合です。遺産分割協議は相続人全員の合意によって成立するものです。基本的には遺留分侵害の主張はできないというのが原則です。しかし、特定の相続人が生前に多額の贈与を受けていた、などの場合は、遺留分の算定に影響します。そして遺産分割協議とは別に「遺留分侵害額請求」をすることは理論上可能だとも言われています。
特に不動産の相続の場合、遺産分割協議の前提になる評価額に対して、その後に売買したときの売却額は不動産市況によって大きく差が出ることもあります。売却額が高額になると、理屈ではなく感情的反発も起きやすく、こうした「意思表示の瑕疵」の主張が起きないとは限りません。
ではどうするのか。不動産を現金に換えてから分配するのが理想的なのでしょうが、それぞれのお宅の諸事情によって現実にはなかなか難しく感じます。まずは、協議書の署名・押印の経緯や、内容を理解していたことを説明できるようにしておくことが大切です。そのためには相続以前から財産に関わることは何事も記録すること、保存しておくことですね。
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