銀行の予約型代理人サービス

 銀行の代理人カードはおすすめしたこともあって知っていたのですが、実はこの「予約型代理人サービス」のことを知りませんでした。サービスの利用にあたっての注意点などを教えて欲しいとのご依頼があって、初めて知った次第です。

 三菱UFJフィナンシャルグループの『「予約型代理人」サービスの導入について』によると、「高齢社会・認知症に関する社会的課題の解決を図るべく、グループ一体となって「予約型代理人」サービスの検討を進め、今般導入に至りました。」ということで、まだご存知ない方もいらっしゃると思いますので、概略を記事にしておきたいと思います。8他の都市銀行でも同じようなサービスがありますので、各銀行サイトでご確認ください)

 どういったサービスかというと、「お客さまご本人の認知・判断機能が低下し、ご本人による金融取引ができなくなる場合に備え、将来、お客さまご本人の代わりにお取引いただく代理人を指定できるサービス」になります。つまり口座名義人が認知症になったときに、その口座の取引ができる代理人を登録しておくということです。代理人カードといったサービスもありますが、認知症になった場合には口座は凍結されて使えないというのが原則です。

 この「予約型代理人サービス」を利用して際しては、口座名義人が口座の取引が困難になったことを証明する医師による診断書(予約型代理人」専用の診断書)を銀行に提出してから代理人の取引が可能になります。

 誰が代理人になれるのか。「原則、ご親族(配偶者または二親等以内の血族)とさせていただきますが、その他のご親族やパートナーをご指定いただくことも可能です。」のことです。

 代理人ができる対象手続は、「円預金の入出金・解約、運用性商品(外貨預金・投資信託・株式等)の売却・解約、住所・電話番号変更のお届け、残高証明書発行のお手続き等」となっています。

 利用手数料は無料となっているので魅力的ですね。登録手順など、詳細は窓口に問い合わせた方が間違いないです。認知症とは限らず、窓口やATMに行くのが困難になった場合には助かるサービスですね。

 さて、気になったのは認知症になった場合の、後見人との関係です。これは後見人が選定されたら、当たり前ですが代理人サービスはそこで終わることになります。法定後見人の権限が優先され、予約型代理人の権限は原則として停止または終了します。つまり、このサービスは口座名義人が認知症になったとして、後見人が選定されるまでの期間をカバーするサービスといえます。

 家庭裁判所で後見人選任の審判が下って、審判確定になり、法務局で「後見登記事項証明書」を取得するまで4か月程度を見ておく必要があると言われています。その間、口座が使えなくて困るケースが多くあります。

 もうひとつ気になるのは、相続人間の合意の上で代理人になっているのかといった問題です。相続人への周知もなく勝手に代理人になっていないか。その上で法定後見人選任までの期間とはいえ、どういう理由で取り引きが行われたのか不明だと問題になりやすいですね。どんな状況であれ、支出金の用途等は記録に残し、領収書等もきちんと整理しておくことが大切になってきます。

 どんなサービスもそうですが、後々問題にならないように考えて利用することが必要になります。書類作成の専門家である行政書士はそういった予防法務の役割も担っています。サービスの内容はパンフレットやインターネットで調べれば分かることです。その上で、どんなメリットがあるのか、どんなデメリットがあるのか、あるいはどんな問題が起きやすいかを気軽に問い合わせていただけることは、とても良いことだと思います。

 行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。気になることがあれば、お気軽にお声掛けください。