遺言書のあいまいな表現

 公正証書遺言であれば、公証人が遺言書として成立するかどうか判断して作成するので問題はないのですが、自筆証書遺言の場合はまず遺言書として法的に成立することが大切になってきます。そこで「たった1行から始める遺言書づくり」といった無料セミナーで遺言書の基礎知識をご説明しています。ただ、遺言書として成立しても、相続問題が起きないとは限りません。

 それは公正証書遺言でも同じなのですが、問題になりそうな点を指摘してもらえることもありますので、少し安心はできます。法務局の自筆証書保管制度を使ったとしても、遺言書として成立するかどうかはチェックしてもらえても内容に関しては難しいでしょう。あくまでも個人の意思が反映された遺言の内容に関して、行政がどうのこうの言う立場ではないですから。もちろん、私たち士業にご相談される場合でも、最終的な内容は遺言者の判断で行うものです。どちらにしてもトラブルを避けるためには、よくよく問題がないか確認しなければなりません。

 相続争いになりやすい問題としてよく言われるのが、相続人に対する相続財産の配分比率です。それに関しては「法定相続分」や「遺留分」を書籍やインターネットで理解も進んでいると思います。その理解のうえで遺言をされることに関しては、それこそ誰も文句は言えないわけです。

 そしてもうひとつ、問題になりやすいとして言われるのが「あいまいな表現」です。ただ、「あいまいな表現」ってどんなことなのか、具体的に分かりにくいようです。「『妻』ではなく『氏名』をきちんと記載しましょう」とセミナーで申し上げたりするのですが、もっと例を挙げてほしい、と言われるとすぐに浮かんでこないものです。

 そこで今回、遺言書でトラブルの原因となりやすい、あいまいな表現や不正確な言い回し、つまり誤解や争いを招きやすい表現をAIを使って20個ピックアップしてみました。

1.「すべての財産を均等に分ける」
  「均等」の解釈が曖昧で、具体的な比率や分け方が不明確なため、相続人間で争いになりやすい。

2.「長男に家を渡す」
  「家」が建物のみを指すのか、土地も含むのかが曖昧で、解釈の違いが生じやすい。

3.「必要な分だけ使用してよい」
  「必要な分」の定義が不明確で、相続人間で解釈の違いが起きやすい。

4.「私の世話をしてくれた者に遺産を残す」
  「世話」の範囲や具体的な貢献度がわからないため、トラブルの原因に。

5.「妻がいる限り、財産を維持する」
  「妻がいる限り」がどのような状況を指すのかが不明確で、異なる解釈を招く可能性がある。

6.「次男に一部の土地を分ける」
  「一部」の具体的な範囲が不明で、後々の争いの原因となりうる。

7.「将来、子供たちで相談して決める」
  遺言の具体性に欠け、相続人が協議して決めることになり、争いが生じやすい。

8.「相続の時期は遺言執行者の判断に任せる」
  時期が明確でないため、相続人間での不安や不満が生じる可能性がある。

9.「妻に生活費を渡す」
  「生活費」の範囲や金額が不明で、遺産分割の際に問題が発生しやすい。

10.「親しい友人に預ける」
  遺産を預ける目的や具体的な扱いが曖昧で、争いの原因になりやすい。

11.「親戚一同で使えるようにする」
  「親戚一同」の範囲が不明確で、具体的な分け方が決まっていないため問題が生じる。

12.「長男に財産の管理を一任する」
  「管理」とは何を意味するのかが不明確で、他の相続人が不満を抱く原因となる。

13.「亡くなった場合は考慮しない」
  誰が亡くなった場合を指すのかが不明確で、誤解を招きやすい。

14.「長女に感謝の意を示す」
  「感謝の意」の具体的な内容が記されていないため、相続における意味が曖昧。

15.「弟が希望すれば受け継がせる」
  「希望」の条件が不明確で、意図が正確に伝わりにくい。

16.「遺産は全て寄付する」
  寄付先や割合が不明確だと、相続人が不満を持ちやすい。

17.「母に必要なものを与える」
  「必要なもの」の内容が明示されていないため、後々の解釈の違いを招く。

18.「第三者の管理のもとで分割する」
  第三者の具体的な人物や方法が明記されていないとトラブルになりやすい。

19.「息子と娘で分け合う」
  分け方や比率が明確でないため、相続の際に争いが生じる。

20.「特に長男に配慮する」
  「配慮」の具体的な内容が不明確で、他の相続人が不公平感を抱きやすい。

 まず。こうした表現がないか確認して、あれば具体的かつ明確に書きましょう。また読んでみて、少し心配になったら相続関係の専門家に頼ることも大切です。相続トラブルを減らすことができると思います。

 AIの活用でいろいろなことが簡単にできるようになりましたが、まだまだ人の思いまで配慮することはできないようです。自分の思いを後に伝え託す、気持ちの整理をする、そういったことはAIではなく、人生経験を積んだ専門家の出番ではないかと思います。

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