遺族厚生年金の改正
2025年の年金制度改正で遺族年金が大幅に改正されるということです。知識的には社会保険労務士先生が詳しいと思いますが、暮らしに関係する重要な改正なので遺族厚生年金についてまとめておきたいと思います。
前提の知識として、一般的に言われるところの「遺族年金」は、国民保険・厚生年金保険の被保険者あるいは被保険者だった人が亡くなったときに、生計を維持していた遺族に支給される年金になります。今回の改正は、厚生年金に加入し働く会社員・公務員がもらえる「遺族厚生年金」が対象となっています。そういうわけで、以下は遺族厚生年金についての記載です。
まず、今まではどうだったのか。
夫が亡くなった場合は、
1)妻が30歳未満なら5年間の受給
2)妻が30歳以上なら生涯受給(※年収・所得制限が就業を妨げているなどの指摘もされていました)
妻が亡くなった場合は、
夫が55歳以上でないと受給権はなく、実際の受給は60歳から
どうしてこういう仕組みになっているかというと、夫が働いて妻が家族を支える「昭和の家計」を前提になっているようです。昭和を前提にしているのはおかしいのでは、ということで改正に至ったという背景については、なるほど感はあります。
具体的には、厚労省は7月末の社会保障審議会で、30歳以上で夫を亡くした妻の受給期間も5年間とし、妻を亡くした夫は55歳未満でも5年受給できる案を示しました。男女共働きの時代だからということでしょう。また、夫を亡くした妻が、40歳から65歳未満まで一定条件で受給できる中高齢寡婦加算も新たに受給し始める人から段階的に減らし、将来的には廃止する予定のようです。
つまり整理すると、最終的な将来は
夫が亡くなった場合も妻が亡くなった場合も同じで、
1)年齢に関係なく5年間の受給
現在の高齢者で、すでに遺族年金をもらっている人や60歳以上で配偶者と死別した人にも適用されるの?と心配になりますが、これまで通り遺族厚生年金を生涯受給できるようです。
子が18歳の年度末まで子に遺族厚生年金を支給する現行の制度はそのままになりますが、ただし18歳を過ぎれば、夫が亡くなった時期から5年後に遺族厚生年金を受給できなくなるようです。従来と違って無期給付ではなくなるとしたら、大学費用などの準備を考えておく必要が出てくると思われます。
改正の施行と同時に、妻が死亡した夫が55歳未満でも遺族厚生年金を受給できるらしく、こちらは有難いですね。一方、夫を亡くした妻の場合は施行から20年程度かけて段階的に適用になって、最終的に5年間の受給へ着地させるようです。
夫の遺族年金をあてにできなくなるという心配が出てきますが、今回の改正には配慮措置もあるようです。
そのひとつが「死亡時分割」です。婚姻期間中の厚生年金加入実績を基に、残された配偶者の65歳以降の老齢厚生年金に上乗せするというものです。上乗せ後の金額の上限は、夫婦の老齢厚生年金の合計の2分の1まで。5年の有期化の対象者向けで、終身で受給でき、再婚しても受給権は消えないとのことです。婚姻期間が長ければ効果が大きいですね。
さらに「配偶者の収入要件」です。現在の制度では年収850万円未満でないと受給できませんが、5年受給ではこの条件がなくなります。
そして「受給金額」です。5年間の受給期間の金額が、現在の遺族厚生年金に比べて増えるようです。亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3が、5年の受給期間中は加算されて、亡くなった人の老齢厚生年金と同額にするとのことです。
今年の7月末時点の情報なので、これから変わることもあるかもしれませんが、注目しておきたいですね。法律といえば、ドラマでも刑法と民法のことのように思われますが、法律のほとんどは行政法になります。様々な法律が私たちの暮らしに密接に関係しています。「そうだ行政書士に相談しよう!」。行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。どんなことでも気軽にご利用ください。