養子と相続

 養子には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があるのですが、その違いを割とご存じない方が多いようです。基本的なところほど、なんとなく分かったような感じでいることって多いですからね。そこで今回は、実親が亡くなったときの相続の違いについて、まとめておきたいと思います。

 まず基本的な違いについてですが、「普通養子縁組」は、養子は実親との親子関係を維持したまま、養親との親子関係も新たに形成されます。したがって、養子は実親と養親の両方の相続権を持ちます。「特別養子縁組」は、特別養子縁組の場合、養子と実親との法的な親子関係は断絶されます。養子は実親の相続権を失い、養親のみの相続権を持ちます。

 「実は養子なんだよ」と聞いても、実際にどちらなのか、分かりにくいですよね。「普通養子縁組」は、未成年や外国人を養子にする場合は家庭裁判所への申立が必要ですが、それ以外であれば戸籍の届出だけで済みます。婚姻届や離婚届と似ています。一方、「特別養子縁組」は、必ず家庭裁判所への申立が必要です。その理由は、裁判所のホームページに以下のように説明されています。

特別養子縁組とは,原則として15歳未満の未成年者の福祉のため特に必要があるときに,未成年者とその実親側との法律上の親族関係を消滅させ,実親子関係に準じる安定した養親子関係を家庭裁判所が成立させる縁組制度です。そのため,養親となる者は,配偶者があり,原則として25歳以上の者で,夫婦共同で養子縁組をする必要があります。また,離縁は原則として禁止されています。

 養子と聞いたら、どちらなのか明確にしていないと、相続に違いが出てきます。特に法定相続人になるかどうかです。
「普通養子縁組」の場合
 実親が亡くなった場合、養子は他の実子と同じように相続権を持ちます。
 養親が亡くなった場合、他の養子や養親の実子と同じように相続権を持ちます。
「特別養子縁組」の場合
 実親が亡くなった場合、養子には相続権がありません。
 養親が亡くなった場合、養子は他の養子や養親の実子と同じように相続権を持ちます。
つまり、実親が亡くなったときに違いが出てくるわけです。

 では、どんなリスクがあるかというと、

「普通養子縁組」での相続
 養子が相続人として加わることで相続人の数が増え、実親や養親の他の相続人の相続分が減少する可能性があります。たとえば相続財産が多くない場合、相続人間での分配が困難になることが考えられます。遺産分割における意見の対立が生じる可能性があるかもしれません。また、実親と養親の両方の相続手続きに関与する必要があり、けっこう面倒になることがあります。

「特別養子縁組」での相続
 実親が大きな財産を持っていた場合でも、養子はその相続権を失うため、相続財産を受け取ることができなくなります。実親との法的な親子関係が完全に断絶されるため、感情的な影響が出てくるかもしれません。特に実親との関係が成人してから良好だった場合、心理的負担も出てきます。。

 普通養子縁組と特別養子縁組の違い等、養子縁組に関する情報は法務省サイトで分かりやすく解説されています。ご参考になさってください。
法務省「養子縁組について知ろう」

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