遺族年金と遺言書

 内縁関係の家庭を持って子供も認知しているのだが、戸籍上の妻とは離婚が成立していない。こういう状態を重婚的内縁関係というそうです。多くは男性だと思われますが、問題になるのは亡くなった後の遺族年金の受給先です。自己の年金に遺族年金がプラスされるかどうか、老後の生活維持に大きな影響を及ぼすからです。

 実際の事例では、長く共同生活を行い、共に年金で生活し、生計を維持してきた内縁の妻であっても、戸籍上の妻と夫の婚姻関係は形骸化していないということで、戸籍上の妻に支給されたケース。一方、新聞に掲載されていた事例では、国は戸籍上の妻に支給すべきとしたところ、裁判で内縁の妻が遺族年金を受給することになったとケースと、一概にどちらといえないようです。

 では、内縁の妻が遺族年金を受給するためにはどんな条件が必要なのか。まず「事実上婚姻関係と同様の事情にある」ことを認定するために、以下のような2つの条件があるようです。
1)当事者間に社会通念上、夫婦の共同生活を認められる事実関係を成立させようとする合意があること。
2)当事者間に社会通念上、夫婦の共同生活と認められる事実関係が存在すること。
どれも抽象的で分かりにくいですが、さらに内縁の妻が被保険者によって生計を維持されていたことを証明する必要があり、具体的な収入要件もあるようです。

 また、内縁関係を具体的に証明する必要書類として、健康保険被保険者証の写し・給与簿又は賃金台帳等の写し・他制度の遺族年金証書等の写し・結婚式場等の証明書又は挙式、披露宴の実施を証する書類・葬儀を主催したことを証する書類(会葬御礼の写し等)・その他内縁関係の事実を証する書類、などが求められるようです。

 この遺族年金受給に関して、遺言書との関係はどうなるのか。行政書士として気になるところですが、このことに関してはあまりネット検索で見つけることができません。社会保険審査会の事例において、重婚的内縁関係にある内縁の妻に、夫が遺言書で遺族年金の受取りを指定したケースがあるようです。結論的にいえば、公正証書遺言や自筆証書遺言で、たとえば「遺族年金等が支給された場合は、内縁の妻にその年金等が支給されるようにしてください」と記載したからといって、その通りに実現できるとは限らないということです。ただ、遺言書の記載によって事実上婚姻関係であったという証明の面では効果はあるみたいですが。

 遺族年金の受給に関しては、まずお住まいの市区町村役場や年金事務所にご相談いただくことを大切です。年金に関しては社会保険労務士の先生の分野ですね。重婚的内縁関係を解消できるなら問題はなくなりそうですが、現実的に難しいこともあるでしょう。モメているのなら弁護士先生へ。相続に関して自分の希望、それが叶うのか叶わないのか、なんとなく悩んでいる状態なら「そうだ行政書士に相談しよう!」の行政書士へ。行政書士はあなたの街の頼れるかかりつけ法律家です。気軽にご相談ください。