国外財産調書とCRS情報

 海外資産に関して仕事上も縁がないですが、海外に法人を所有する仕事先もあり、海外資産の相続に関して気になっていました。特に気になるのは、相続時の海外の資産について税務調査はどうやっているのだろうか、ということです。ちょっと調べてみました。税務署は、「国外財産調書」と「CRS情報」といったものを照合して、申告洩れや過少申告の国外財産がないか調査しているらしいです。

国外財産調書

 まず、毎年12月末時点で5千万円を超える国外財産有する「居住者」(非永住者を除く)は、財産の種類、数量、価額、およびその他必要な事項を記載した調書を税務署に提出する義務があります。この調書を国外財産調書と呼びます。この調書は、その年の翌年の6月30日までに、住所地等の所轄税務署長に提出する必要があります。ここでいうところの「居住者」とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を指します。また、「非永住者」とは、居住者のうち、日本の国籍を有しておらず、かつ、過去10年以内において国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人を指します

 国外財産調書を提出する場合、所得税の確定申告をする必要がある方または所得税の確定申告書を提出できる方は、所得税の納税地を所轄する税務署に、それ以外の方は住所地(国内に住所がない場合は居所地)を所轄する税務署に、それぞれ提出します。国外財産調書を提出する際には、「国外財産調書合計表」を作成し、添付する必要があります。提出にはパソコンを利用したe-Taxも利用できるようです。

 もし、国外財産調書に偽りの記載をして提出した場合や正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることがあるので注意が必要です。詳しくは、国税庁のホームページでご確認ください⇒https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hotei/kokugai_zaisan/index.htm

CRS情報

 CRSはCommon Reporting Standardの略で、共通報告基準といいます。各国・地域の税務当局はそれぞれの金融口座の情報交換を年1回、自動的に交換する仕組になっていて、預金や有価証券の残高、利子や配当といった詳細情報を入手しています。それには情報の共通した基準が必要になりますが、CRS(共通報告基準)は経済協力開発機構(OECD)が策定した基準になります。外国の金融機関にある口座等を利用した国際的な脱税や租税回避を防止するためにスタートし、日本でも平成30年からCRSに基づいた情報交換が始まっています。

 各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供する仕組になっています。

 日本国内では、国内にある金融機関等は、毎年4月30日までに特定の非居住者の金融口座情報を所轄税務署長に報告しなければなりません。報告された金融口座情報は、租税条約等の情報交換規定に基づき、各国税務当局と自動的に交換されることになります。各国税務当局からは、日本に住んでいる人の外国にある金融口座情報が国税庁に送られることになるわけです。こちらも詳しくは、国税庁のホームページでご確認ください⇒https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/index.htm

 海外なら分からないだろうというのは、甘い考えということですね。円安だから円建てより資産価値が上がるということかもしれませんが、逆に相続税の申告洩れや過少申告になったりすると、追徴課税が発生するという事態にもなります。相続人になったら、申告財産に漏れがないか、評価額は低過ぎたりしないか、慎重に財産目録を作成することが大切になります。なにか気になることがあるようでしたら、「そうだ行政書士に相談しよう!」あなたの街の頼れるかかりつけ法律家・行政書士の利用をご検討ください。