本当に相続放棄なのか

 「相続放棄」の手続きや確認については、すでに「相続放棄の手続き」「相続放棄の確認」「第三者による相続放棄の照会」という記事掲載をしています。それでもなお相続放棄に関する記事を掲載したくなりました。理由は、お客様やご相談者がおっしゃる「相続放棄」が「相続放棄」ではない場合がけっこう多いからです。

 つまり、「遺産分割協議書」に相続財産を「要らない」として押印したということを、「相続放棄」と勘違いされているわけです。書類が送られてきて押印したことの記憶はある。内容はよく覚えていないが、財産の相続はしていない。だから「相続放棄した」とおっしゃるわけです。だからといって、その書類が本当に「遺産分割協議書」だったのか、あるいは「相続放棄申述書」だったのか、こちら側としてはまだ確信は得られません。

 「相続放棄」の申述は家庭裁判所に対して行うのですが、「相続放棄申述書」は代理人に代わりに提出してもらうことができますし、亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所に持参する必要はなく、郵送により提出することが認められています。「相続放棄申述書」を提出する法律行為ですから、特別な資格などは必要なく、配偶者や子どもなどの親族に依頼が可能です。そうした理由から押印した書類が「相続放棄申述書」ではないと言い切れないわけです。

 それでは何を基準に判断したらよいか。そのことについて書いておきたいと思った次第です。

 「相続放棄」には申述期限があるので「お亡くなりになった日から3か月以内でしたか」と質問したくなりますが、ほとんどの方は覚えていません。そこで「家庭裁判所から照会書が送られてきましたか。家庭裁判所から電話がありましたか」と質問することになります。相続放棄の手続きの過程で、家庭裁判所から照会書を郵送されてきます。内容の確認で電話がかかってくることもあります。裁判所からの連絡なんて日常生活ではまずないですよね。だから裁判所から確認の連絡があったかどうかについてなら、ほとんどの方は覚えていらっしゃいます。

 「相続放棄した」と思っておられる方は、ぜひ、家庭裁判所から連絡があったかどうか、思い出してください。もし、連絡を受けた覚えがないようでしたら、それは「相続放棄」ではなく「遺産分割協議で相続財産を受け取らないことにした」ということです。間違った知識で「相続放棄は簡単だったよ」などと他の方へアドバイスされると、その方の相続手続を混乱させるばかりです。

 この知識が本当なのか。実務的に本当に使える知識なのか。確かめておくことは大切です。なにか気になることがあるようでしたら、「そうだ行政書士に相談しよう!」あなたの街の頼れるかかりつけ法律家・行政書士の利用をぜひご検討ください。