NISAの相続は少し違ってくる

 NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)が、本当に人気のようです。通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です。

 先日、「投信・株式の相続」という記事を書いた後に、NISAの相続が従来の株式相続と同じなのか気になり、調べてみました。上場株式の相続なら、証券会社ごとに用意されている所定の書類と添付資料を提出して、相続人の証券口座に株式を移管するのが一般的です。NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)口座の場合は、基本的に手続そのものは同じですが、多少異なる点があるようです。

 「投信・株式の相続」という記事で書いていますが、上場株式や上場投信(ETF)の場合は、4つの計算方式の中でうち最も低い金額で評価します。この計算方法自体は、通常の口座(一般口座や特定口座)であってもNISA口座であっても同じです。

 注意しておきたいのは、被相続人のNISA口座内の株式が相続人のNISA口座に引き継げないということです。

 なぜ引き継げないのか。それは被相続人がNISA口座で株式などを保有していた場合、非課税となるのは亡くなった日(相続発生日)までだからです。NISA口座での非課税措置は、本人が健在の間であり、死亡した時点で非課税の措置は終了してしまいます。だから相続人に引き継がれないわけです。つまり相続人のNISA口座ではなく、相続人の通常口座(特定口座もしくは一般口座)に相続することになります。

 また、さらに注意しておきたいことは「取得日」と「取得価額」です。相続では「取得日」と「取得価額」は、通常の口座の場合、被相続人が取得した日が「取得日」で、その時の価額が「取得価額」になりますが、NISA口座では、被相続人が死亡した日が「取得日」になり、その日の終値が「取得価額」になります。

 通常の口座の場合、相続人が取得した後に株価が上がって売却すると利益が出て、課税されます。NISA口座の場合は、被相続人の死亡日の「取得日」と「取得価額」になりますから、売却しても利益はゼロになり、課税されません。

 もちろん通常口座(特定口座もしくは一般口座)に引き継いだ後に、株価が上昇して売却すれば課税されます。

 なんだか分かりにくくなってきました。…お金のことはともかく、相続をスムーズに行うためのポイントは、NISAをはじめ投資の詳細を分かるようにしておくことです。できれば相続人にそうした財産を残しておいた方が良いか、あるいは現金化しておいた方が良いか、相続人の気持ちを把握しておくことだと思います。

 相続は残す人だけではなく、残される人の気持ちも大切です。争族といいますが、トラブルになったいろいろな事例は本やメディアで目につきやすいです。すんなりいった相続はあまり目立ちません。でも、そこには少なからず工夫があったりします。ぜひ、専門家の知識を利用していただきたいと思います。「そうだ行政書士に相談しよう!」あなたの街の頼れるかかりつけ法律家・行政書士に、まずは気軽にお声掛けください。