おしどり贈与と相続
婚姻期間が20年以上の配偶者に居住用不動産または住宅購入資金を贈与する場合、贈与税の配偶者控除の特例として2000万円まで非課税になります。このことを「おしどり贈与」と呼びます。制度自体は知っていたのですが、おしどり贈与と呼ぶことは知りませんでした。まだまだ勉強不足ですね。たしかに「おしどり贈与」で検索するとけっこう出てきます。
贈与と相続の関係で、問題になるのは特別受益の存在です。特別受益とは、被相続人(亡くなった方)から生前贈与や遺贈、死因贈与を受けた相続人がいる場合、その贈与分のことです。遺産分割時には特別受益分を分割する遺産に加えることになります。これを「持ち戻し」といいます。合計した相続財産を遺産分割協議で分割することになります。おしどり贈与は、特別受益の位置づけです。
多額の現金を残してなくなられる方は別でしょうが、一般的に財産の中で不動産、つまり自宅の割合が大きいのではないでしょうか。おしどり贈与された自宅を持ち戻しされると、生活に必要な現金が足りなくなるケースも出てくることになります。それではこまりますよね。
そこで、民法改正によって、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、特別受益としては扱われない旨の意思を表示したものと推定すると定められました。
2000万円という制限は基本的に相続税法上の優遇措置で、民法903条4項上に金額の制限はないので、もっと高額な不動産も持ち戻し免除となります。また相続税法上は金銭の贈与が含まれますが、民法903条4項上には含まれないので遺産分割上の優遇はありません。
とはいえ、相続時にモメる時はモメるものです。遺言の中で「特別受益の持ち戻しを免除する」という内容の意思表示をしておくことも考えておくべきでしょう。
特に注意が必要なのは、遺留分侵害額請求権の存在です。特別受益にあたる贈与について持ち戻し免除の意思表示がされた場合であっても、遺産分算定の基礎となる財産額に入ると最高裁の判断が出ています(平成24年1月26日決定)。遺留分権利者に侵害を加えることを知って贈与をした場合、相続開始より10年前以前のものについても遺産分算定の対象財産となるとされていることも併せて注意しておきましょう。
相続のことを話すとなると誰でも躊躇するものです。士業の場合は守秘義務があります。安心して相談してください。話すことで道は見えてきます。あなたの街の頼れるかかりつけ法律家・行政書士に気軽に相談してください。