死後認知
法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子のことを非嫡出子といいます。その親子関係を法的に確定するのが「認知」ということですが、父親自身が認知の届出をしたり、あるいは遺言によって認知をすることもできます。そうした行為がなく、父親が亡くなっている場合にはどうするか。死亡日から3年以内に、非嫡出子本人の住所地または父親の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で検察官に対して「死後認知」の訴え(死後認知訴訟)を提起します。
提起できるのは、非嫡出子本人やその法定代理人です(民法787条)。例えば、非嫡出子本人が未成年の場合は、親権者である母親や未成年後見人が代わって訴訟を提起できます。非嫡出子本人の直系卑属(子や孫など)やその法定代理人も死後認知訴訟を提起できます。
訴状が提出されると、被告となる検察官に訴状が送られ、裁判所で第1回期日が開かれて審理が始まります。なぜ、事情を知らない検察官が被告?と思いますが、父親は亡くなっているので検察官が相手方を担うということです。実際は「利害関係人」として、父親の相続人(父親の配偶者や嫡出子など)に訴訟になったことが通知され、「補助参加」という形式で訴訟に参加することになり、実質的には非嫡出子と配偶者・嫡出子の間の争いになるようです。
審理では親子関係を証拠によって立証することが必要になるわけですが、通常、DNA鑑定の結果が最も有力な証拠となります。父親はすでに死亡しているため、他の近親者(父親の嫡出子など)にDNA鑑定の協力を求めることになります。強制ではないのでここが難しそうですね。協力が得られない場合には、父親と母親との出会いから妊娠、出産に至る経緯などを写真やメール、手紙、証言などで立証することが可能な場合もあり、必ずしも死後認知が認められないというわけではないいようです。
無事に死後認知請求を認める判決が出たら、判決書と確定証明書を役所に持って行って認知の届出をします。
さて、それから遺産分割になるわけですが、死後認知された非嫡出子にも嫡出子と同じだけの相続分が認められていますので、遺産分割協議がまだであれば参加して遺産分割を行うことになります(参加しないままの遺産分割協議は無効です)。しかし、判決が出る前に、すでに遺産分割協議が成立しているケースは多いようです。その場合、相続分の請求をどうするのか。
すでに遺産分割協議が終わっている場合には、やり直しを求めることはできません。すでに成立した遺産分割を無効にして改めて協議をやり直すことは他の相続人にとって負担が大きく、混乱を招きかねないためです。その代わりに同じ順位の相続人に対して、自分がもらえるはずだった相続分に相当する金額の支払を請求することができます(民法910条)。亡くなった父親に他に子がおらず、配偶者と父親の兄弟姉妹で遺産分割が行われた場合は、金額の支払請求ではなく全面的に遺産を取り戻すための「相続回復請求」を行うようです。
こうやって調べてみると、遺言書で認知しておいて欲しいですね。そのうえで相続分を明記しておいて欲しい。生きているうちに認知できない理由があったにしても、死後のことですからね。ま、私的な意見なので、最終的にはご本人の意思です。どちらにしても一人で考えずに早め早めに専門家に相談していただきたいです。「そうだ行政書士に相談しよう!」あなたの街の頼れるかかりつけ法律家・行政書士を、ぜひ、ご検討ください。