共有物分割請求訴訟
実家の相続で、不動産の共有はよくないと言われています。共有状態のまま子が死亡して孫が相続すると、いろいろなことが大変になるからです。売却するにも、貸したり建て替えたりするにも共有者の同意が必要なので時間も手間もかかります。意見が合わずに揉めたりすれば、それこそ先が見えない事態になります。
そうしたことが実際に起こるので、空き家問題にも発展しかねず、政府も対策を図ることになっています。その流れで2023年4月に施行した民法改正があります。第258条です。今まで規定されてなかった代償分割が明文化されました。以下の条文になります。
(裁判による共有物の分割)
第二百五十八条 共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
2 裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。
一 共有物の現物を分割する方法
二 共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法
3 前項に規定する方法により共有物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。
4 裁判所は、共有物の分割の裁判において、当事者に対して、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命ずることができる。
共有物の分割は3つの方法があります。
一つは、持ち分に応じて物理的に分ける「現物分割」ですが、実家が1軒なら困難です。次に共有物を取得する人が他の共有者に代償金を渡す「代償分割」ですが、資金が必要だし、代償金の額を巡って揉めることもあります。三つ目が売却して代金を分ける「換価分割」ですが、実家を住みたい残したいという相続人がいる場合は難しいです。
この3つの方法を法律で規定して共有分割を促進しようというわけですが、まとまらない場合にやるのが、共有物分割請求訴訟になります。今回の民法改正で裁判所としては現物分割だけでなく、代償分割による調整ができることになったわけです。
とはいえ、最終的に折り合いがつかないと三つ目の換価分割の判決になります。実家を第三者に売却する競売が判決となってしまいます。競売ですから市場価格より大きく下がって、納得できない金額を分けることにもなりかねません。感情的なしこりが共有者全員に残り、関係性が切れてしまうことも考えられます。
これでは民法改正前と同じで、改正のメリットは感じられないでしょう。もめない相続にするためには、財産の棚卸しが必要です。そのきっかけになるのが遺言書づくりではないでしょうか。遺言書づくりを難しく考えず、遺言書の土台づくりをやってみて、考えてみることが大切です。行政書士は「あなたの街の頼れるかかりつけ法律家」です。遺言書の土台づくり、ぜひご相談ください。