デジタル遺言とマイナ電子証明書
自筆証書遺言は手軽に作成できるイメージがあるようで、検討される方も多いようです。自筆証書遺言保管制度によって記載ミスや保管の問題も少なくなったとはいえ、まだまだ遺言書を実際に作成される方は少ないようです。公正証書遺言は22年度は約11万件作成されて増えていますが、費用や手間の問題で二の足を踏む方もいらっしゃいます。相続を円滑に進めるために、国も対策を考え、デジタル遺言が検討されているようです。
デジタル遺言は自筆証書遺言に近い形式になります。インターネット上で遺言書を作成し、自筆証書遺言保管制度と同様に法務局が管理するようです。気になるのは、日付の特定はどうするのか、本人の遺言能力の有無はどう確認するのか、本人の意思はどう担保するのか、署名はどうするのか、といったことです。
遺言能力や本人の意思は、これから作られるシステムの設計によると思われます。日付はタイムスタンプの利用、署名はマイナンバーカードの電子証明書を利用することになるようです。そういうわけで、今回はマイナンバーカードの電子証明書について、基本的なことを参考までに記載しておこうと思います。
まず、電子証明書とは何か。信頼できる第三者(認証局)が間違いなく本人であることを電子的に証明するもので、書面取引における印鑑証明書に代わるものといえます。電子証明書には2種類あります。
ひとつは、署名用電子証明書です。インターネット等で電子文書を作成・送信する際に利用して、作成・送信した電子文書が、利用者が作成した真正なものであり、利用者が送信したものであることを証明できます。デジタル遺言書での署名に利用されると思われます。
もうひとつは、利用者証明用電子証明書です。こちらはログインする際に利用します。ログインした者が、利用者本人であることを証明するものです。デジタル遺言を作成する際に本人であることを担保するのに利用されると思われます。
というわけなのですが、じゃあ、簡単に自宅で出来るのかと質問を受けたら、「ちょっとちょっと」となりそうです。スマホで使えるように検討中らしいですが、遺言の本文作成を考えるとパソコンの方が便利だと思われます。パソコンには専用のソフトがインストール(導入)が必要になると思われます。加えてマイナンバーカードを読み取るICカードリーダライタも必要でしょう。もちろん、ICカードリーダライタのドライバのインストールも必要です。
すでにe-Tax等の電子申請をやられている方なら、苦労なくできるかもしれませんが、初めてだと少し手助けが必要かもしれません。ちなみに電子証明書の期限など、マイナンバーカードへの設定情報は専用サイトで確認できますが、住民票のある市区町村の窓口で確認可能です。
注意しておきたいポイントがあります。引っ越しされると署名用電子証明書は再申請して新しい署名用電子証明書にしないと使えません(利用者証明用電子証明書は使えます)。利用に当たっては、パスワードの入力があるので、忘れていたら住民票のある市区町村の窓口で、本人確認のうえでパスワード初期化申請をし、パスワードの再設定が必要です。パスワードは、署名用電子証明書については5回連続で、利用者証明用電子証明書については3回連続で、間違って入力すると利用できなくなってしまいます。これも住民票のある市区町村の窓口で手続きになります。
遺言書の作成を、どの形式でやるのか。難しいところですが、面倒だと思ったら専門家にまず相談してください。いろいろな士業が相続業務を行っていますので、専門家ならではの対応が可能だと思います。行政書士は、あなたの街の頼れるかかりつけ法律家、気軽に相談できる専門家です。ぜひ、ご利用ください。