任意後見開始前の任意後見契約の解除

 任意後見監督人が選任された後の解除は、家庭裁判所の許可が必要になります。では、任意後見が開始する前に契約を解除する場合はどうするのでしょうか。

 もちろん契約書の中に、「任意後見監督人が選任される前においては、本人又は任意後見受任者は、いつでも、公証人の認証を受けた書面によって、任意後見契約を解除することができる。」といった解除の項目が必ずあるので、本人または任意後見受任者は、いつでも公証人の認証を受けた書面により契約を解除することができます。

 この場合、合意の解除なのか、一方からの解除なのかで、少し手続きが違ってきます。

 本人(委任者)と受任者の合意による解除の場合は、合意解除書(合意解除の意思表示を記載した書面)に双方が署名捺印をして、公証人の認証を受けます。(もちろん、費用がかかります)

 どちらか一方から解除する場合は、公証人の認証を受けた解除通知書を、配達証明付き内容証明郵便で相手方に送付します。配達証明付きというのは、書留郵便物を配達した事実を証明するもので、相手方に到着した日を記載したハガキが配達局から送付されてきます。このハガキが配達証明書となるわけです。

 大切なのは、ここで終わりではなく、どちらにしても終了の登記が必要だということです。任意後見契約を公証役場で結んだときには、公証人が代わりに登記手続きを行っているのですが、任意後見契約を解除した場合には、当事者が終了の登記を行わなければなりません。

 終了の登記、つまり登記の抹消は、東京法務局民事行政部後見登録課のみで扱っていますから、直接窓口で申請するか、郵送で申請することになります。この登記の手数料に関しては無料となっています。郵送の場合、簡易書留等の記録が残る郵便方法にしておくと安心です。

 合意の場合には、公証人の認証を受けた合意解除書の原本または謄本を添付します。一方からの解除の場合は、配達証明付き内容証明郵便の謄本、および届いた配達証明書を添付しなけらば終了の登記は行えないので、注意が必要です。ちなみに終了の登記は、本人の親族などの利害関係人も行うことができます。

 実は、親子でよく話し合って任意後見契約を結んだにも関わらず、他の兄弟姉妹から頼まれて本人(委任者)がよく分からないまま解除の手続きをしてしまったという話も聞きます。それで、今回は任意後見が開始する前の契約の解除について記載してみました。

 契約を結んだからら安心、とはいきません。契約というのは解除もあるということです。毎度のことになりますが、まず家族でよく話し合っておくことが基本です。そして、やろうとすることに対して、どんな事態が想定されるのか、その知識を前提とした進め方が必要です。嫌な思いをしないためには、まずは気軽に街のかかりつけ法律家、行政書士を活用していただければと思います。