自筆証書遺言と印鑑

「脱ハンコ」で、最近は印鑑をなくす傾向にありますが、自筆証書遺言には印が必ず必要です。

 民法968条1項に「自筆証書遺言によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」とありますので、法律が改正されない限り、印を押す必要があります。条文上では単に「印」と書かれているので、実印でなくても認印でも問題はないのですが、やはり実印をおすすめします。理由は印鑑証明書で公的に本人の印だと証明できるからです。これはどういうことかというと、

 民事訴訟法228条4項には「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」とあり、文書にある印影が本人の印鑑によるものだとされたら、原則として本人の意思に基づいて押印されたものと推定されます。その結果、文書全体が本人の意思に基づいて作成されたものと推定されることになるわけです。ここでも本人の印ということですから、実印には限らないのですが、実印は公的に登録されており、印鑑証明書によって本人の印と証明できるわけです。

 以前、「拇印なら間違いなく本人と分かるので、遺言書には拇印ではダメなのか」という質問を受けたことがあります。これって、何故ダメなのかお分かりになりますか?

 遺言書が問題となるのは、遺言者の死亡後です。亡くなった後なので、指紋を照合することが出来ないからです。特に日本の場合は火葬なので、全く無理ですね。

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 外国ではサインが主ですが、日本も平安時代末期から室町時代にかけてはサインの時代だったそうです。花押が偽造されやすかったからハンコが主役になったそうで、遺言書の花押は、印章の代わりにならないという最高裁判決が出ているようです。戦国時代になると織田信長の「天下布武」や武田信玄の「竜の印判」など、花押とハンコの両方を用いたようです。まさに自筆証書遺言も署名と押印の両方が必要で、間違いなく本人と確認できるような仕組みになっています。

 不動産や車の売買がなく、実印を作られていない方もいらっしゃいます。自筆証書遺言を作成する場合、面倒でも実印登録された印をお使いになることをおすすめします。ちょっとした気配りで、モメごとが起きる可能性は少なくなります。遺言書はもちろんのこと、大切な書類を作成するときは、書類作成の国家資格者であり、予防法務の担い手である行政書士にまずはご相談ください。